大人の髪型にパリパリの白いシャツ

英国は今、冗談好きボリス、そして会見では大きな見出しになるような言葉を必ず発してくれたボリスが「消えた」状態になっている。毎週議会で開かれる、首相が野党議員からの質問に答える「クエスチョン・タイム」では、メイ首相が座るベンチに主要閣僚が肩を並べる。テレビカメラを通して、スーツ姿のジョンソン外相の顔が見える。メイ首相を支える内閣の一員としてそこに座っている姿だ。

ボリス・ジョンソンが自らを重ねて書いたともいわれる評伝、『チャーチル・ファクター』(プレジデント社刊)。イギリス国会議員が選ぶ夏休みの読書ランキングでも上位に食い込んでいる。

外相就任後まもなくドイツでは殺傷事件が発生し、トルコではクーデター未遂事件が起きた。コメントを出すためにマイクを向けられたジョンソン氏の口からは当然のことながら冗談は出てこない(ミュンヘンの銃撃事件を早々にテロと決め付けたことは一部で批判されたが)。これまで通りの気さくな雰囲気は維持しているものの、もはや国民を笑わせることに躍起になってはいないようだ。

見た目も心なしか、変わっている。先にEU外務理事会に出席したジョンソン氏は髪を短くして現れた。それまではボサボサの金髪がトレードマークだったが、後ろを短く刈り上げた「大人の」ヘアスタイルになった。サイクリング好きのジョンソン氏は頭にはヘルメット、背中にはリュックを背負って、自転車を一跨ぎする。こうした「いかにも身に着けるものには一切構わない」という様子が、外相就任後「大きく変わった」と英フィナンシャル・タイムズの記者は観察する(7月26日付記事)。頭髪は短くなり、「パリパリの白いシャツ」を着て、スーツを颯爽と着こなすようになった。シリアスな仕事にはシリアスなスタイル、ということだろう。

7月29日、ジョンソン氏は改めてパリを訪問し、エロー外相と会談した。エロー氏はかつてジョンソン氏を嘘つきと呼んだが、今回は「ようこそ」と歓迎の意を表し、ジョンソン氏のフランス語を誉めたりもした。ジョンソン外相はフランスとの協力体制の重要性を強調し、4分にわたるスピーチをフランス語で行ったのだ。自国語に強い自負心を持つフランス側にとって、大きな親善の気持ちが伝わっただろうことは予想できる。