長時間労働の文化を変える施策

――19時前退社の話がありましたが、ほかにどのような施策をしていますか?

【藤森】長時間労働の文化を変えるには、人事評価制度が重要です。LIXILでは、「パフォーマンス」と「リーダーシップ」の2つの軸を掛け合わせた「9ブロック」で評価しますが、そこでも労働時間は評価に関係ない。長い時間働いて勝っていくという価値観はありません。

もう一つはトップがいかに文化をつくり、下におろしていくかが大事です。“8時間の勝負”も、次の段階では、どの8時間で働いてもいいようにフレキシブルにしていく。9時から夜6時でもいいし、10時から夜7時でもいいんです。

【田川】ITシステムの導入と、人との調和、チームやお客さまとの調和を取ることですね。働きがいや働き方改革の中に、ちゃんとITを組み込まないといけない。これはコストではなくて、投資です。

JTB 会長 田川博己氏「生産性向上が、社員の働きがいになる。取り組みをしない経営者は現場が見えていないのだと思う」

1990年代の旅行業は、店頭の残業がひどかった。旅行というのはオーダーメードですから変更・取り消しが常態化しており、店頭の業務時間が長いんです。1人の社員がすべての手続きをするためです。そこで、熊本と札幌にセンターを作って、バックヤードの仕事を移しました。電子カルテでどこでも対応ができるようにしたことも大変有効でした。

【松本】カルビーでは在宅勤務を推奨しています。自宅では身支度をしなくても仕事ができますから、往復の通勤時間と合わせて3時間半ほど削減できます。

それと、どこの会社でも成果主義の導入が重要なのではないでしょうか。仕事とは基本的に3つしかありません。(1)やらないといけないこと(2)やったほうがいいこと(3)やらなくてもいいこと。長時間労働をする人は、この(2)と(3)に時間をかけているから生産性が上がらない。成果主義になると、優先順位を自分で考えるようになります。カルビーでは年に1度、社員全員が上司と契約を結び、それを一番効率の良いやり方で達成するようにという評価制度を導入しています。

なぜ、日本企業全体が成果主義にならないのかというと、それは政治や労働慣行の問題が大きい。終身雇用、年功序列、残業手当、定年という21世紀にふさわしくない労働慣行が残ったままです。この状況でグローバルで戦っていくのはしんどいですよ。こんなことをやっていると日本はいつまでたってもよくなりません。