結婚相談所に20万円

そこで目が覚めた彼女は、サイバーポリスにその件を報告。ネットワークは退会したが、サイトでの婚活は継続し、結婚相談所にも登録した。写真や洋服代を含め、20万円支払った。そこまでして結婚したいのは、「そうですね、一生一人でいたら寂しいし、不安だし、子どもも欲しいから、というのは、表向きの理由ですかね。本音を言えば、長い間、好きで好きでたまらなかった人とは結婚できないとわかって、ほかの人を探そうと思って、やっと好きになった人にふられて……。悔しいし、悲しいし、耐えられないから結婚したいと思ってる、ということになるでしょうか」

一生結婚しないと最初から決めていたわけではない。

けれど仕事を懸命に頑張ってきて、気が付くと周りに独身男性がもう少なくなっていたのだ。

「私、36歳になるまで自分が結婚してないなんて、考えたこともありませんでした。30代ならば結婚をしていて当然で、子どももいて、ニコニコと暮らしている……そんなイメージしか持っていませんでした」

このままずっと一人なのかな? そんな不安が芽生えては、毎日いてもたってもいられなくなるという。

未婚が「当然」となる時代

奈央さんの心情は、決して特別なものではないだろう。そして先の多恵さんも。

というのも、現在日本の未婚率は上がり続けていて、2010年の国勢調査では、30代後半男性の未婚率は35.6%、女性は23.1%。また、50歳の時点で結婚をしてない割合を表す“生涯未婚率”は、平成27年版厚生労働白書では、「2035年には男性が29.0%、女性が19.2%になる」とも予測されている。つまりこのまま進むと、男性の3人に一人、女性の4~5人に一人は、一生シングルということになる。

シングルであることがいわば「当然」とも言える今の時代に、人はどのようなつながりを作ることができるのだろうか? そんな思いから、私は去年、100人の未婚男女を取材し、一冊の本にまとめあげた。結婚なのか、それ以外にもなにか“安住”の方法はあるのか――。ぜひご覧いただいて、これからの時代の“つながり方”を考えていただけたら幸いだ。

『未婚当然時代~シングルたちの“絆”のゆくえ』(ポプラ新書)
年々上がり続ける未婚率。結婚しないで生きていく人が大多数になった社会では、未婚者が困ったときには誰が手を差し伸べるのか。ひとり暮らし世帯が増えただけでなく、地縁も会社の縁も薄らいできている今の時代に、“絆”はどこで、どうやって築くことができるのか? 本書では、現代ならではの最新の婚活事情を紹介しながら、シェアハウスやゲストハウス、地方移住、ビジネスの異業種交流会、NPO、ツイッターでつながる人たちなど、未婚者たちへの丁寧な取材から「新しい絆」の可能性を探ってゆく。

にらさわあきこ(文筆家)
NHKディレクターとして海外紀行番組や人気スタジオ番組などを多数手がけたのち、文筆業に。幸せな生き方を探求し、結婚や婚活などを主なテーマに執筆を続ける。著書に、500人の男女への取材をもとにした『必ず結婚できる45のルール』(マガジンハウス)、婚活する女性たちの姿を描いた『婚活難民』(光文社)などがある。丁寧に心情に迫る取材姿勢に定評がある。