これは、お題目だけの女性活用推進例にも言えるリスクではないかと思っている。本音のところでは心地よい男性のみの単性社会でいたいのに、体面や数合わせのために「女性を招いてあげた」といういびつな構図が透けて見えるような組織で、組織の一員になれずに「姫」になってしまった/されてしまった女性はつぶれる。

対等なメンバーとして扱おう、組織としてバランス良くなろうという気があるのなら、組織の中に妙な力学が起こらないよう腐心するはずだ。そもそも、この時代になっていまだ本音レベルでは擬似単性でいたがる一部の組織文化などは、時代遅れもいいところであって、経営嗅覚の鈍さ、機を見て敏ならぬ鈍臭さも感じられる。今どき「女も招いてやる」というメンタリティの組織には、招かれないほうが賢明なのかもしれない。

「女であること」は、そのひとの価値を説明するスペックの1つにはなり得るが、能力そのものではない。今、自分が所属する集団や組織において「あなたがそこにいてもいい理由」の中に、明に暗に「女だから」が入っているのを察したら、少し警戒して臨んだほうがいい。それはあなたの能力、あなた自身の魅力に対する評価ではないのだから、そこに自分を委ねてしまってはいけない。だって、付き合っているひとに「どうして私を選んだの?」と聞いて「女だから」なんて言われたら、ひっぱたくでしょう? これはきっと、男性でも同じことなんじゃないかな。

河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。