原作が良くても、映像(映画・ドラマ)がイマイチだということは充分あり得る。

しかしその逆、原作が悪いのに、映像が素晴らしかったということはまず起こらない。冷静に考えてみたら、当然のこと。内容が魅力的でないものは、何をどうしても(映像化にしても)魅力的にはならないであろう。

では、書籍そのものについてはどうだろうか? 書かれている内容・中身と本の外見ともいえる装丁との関係。

内容・中身が良くて、装丁がイマイチ。逆に、内容・中身は駄目だが、装丁は素晴らしい。考えてみてほしい。

『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』
川崎貴子著/KKベストセラーズ刊

答えはどちらもNO。良い本(ここでは、あえて売れる本とする)は、内容・中身、装丁どちらも良いのである。無論、装丁については、ベストセラー・ロングセラーは、書店にも長く積まれ、陳列されるため、「見慣れてくる」「違和感がなくなる」という無意識の効果があることも多分にあるのだが。

1日に何箱、何十箱と入荷してくる新刊段ボールたち! その段ボールを開け、新刊を書店員が取り出す時、「うわ! 売れそう、この本」と思う(感じる)瞬間がある。そして、大概それは当たる。

『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』がそうだった。表紙はイラスト、赤い帯に「愛を乞うより、愛してしまえ。」という印象的なコピー、そしてエッセイスト・小島慶子の推薦文。目立つが、浮ついたところ、媚びたところがまったく感じない装丁。売れる予感がした。そして、中身は……実に魅力的なエッセイであった。