軽口を叩いただけ、部下が不祥事を起こしただけ、疑われただけで、懲戒処分が下されることがある! ここでは最新の傾向と自己防衛術を紹介しよう。

機密に触れる人をいかに少なくするか

2014年7月、ベネッセが顧客情報を流出させたということで大問題になった。流出した顧客情報は最大で2000万件超というすさまじさだ。さすがにこれほどの規模の不祥事はそうそうないだろうが、どの会社にでも、起こりうるということを肝に銘じておく必要がある。重要なのは保険だ。医師や弁護士をはじめ、トラブルが起こったときに高額の賠償を要求される職種用の保険は多種多様にある。情報流出に関しても保険が有効だ。保険の種類によっては、記者会見用のコンサル費用も賄ってくれる。いざ問題が起こってから慌てても遅い。多数の顧客情報を扱う業種であれば、中小企業であっても加入しておくべきだ。

また、競業避止義務でトラブルになることも多い。職業選択の自由に反するのではないかという指摘もあるが、数年間、地域を限定して、同じ職種であったり、同様の業務を取り扱う仕事には就きませんという誓約書に実際にサインしたことがある人も多いだろう。ライバルに技術を盗まれたくなければ特許を取れという意見もあるだろうが、特許は20年経てば、あとは皆さんご自由にという制度だ。どうしても情報を守りたければ、トップシークレットに触れる人員を限りなく制限する以外に方法はない。

時折、内部告発した人が会社に懲戒免職を食らうという事例もある。実際、大阪いずみ市民生協事件では、組織を私物化していた役員を内部告発した職員が懲戒解雇を受けた。しかし、内部告発は公益性を有しており、内部告発に対する懲罰的人事を行うことは違法であるということで、解雇無効の判決を勝ち取っている。ただし、情報の入手の仕方や外部に公開する情報の選択を誤ると、その後かなり厳しい事態になることを覚悟しなければならない。

弁護士 野澤隆
1975年、東京都大田区生まれ。都立日比谷高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒。弁護士秘書などを経て2008年、城南中央法律事務所を開設。
 
(唐仁原俊博=構成 小原孝博=撮影)
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