生け花で「経営力を磨く」社長たち

生け花は、女性のたしなみ。そんなイメージを持つ人は多いだろう。だが、そんな考えは古いかもしれない。今、とりわけビジネスリーダー層の男性で生け花に興味を持つ人が増えているのだ。

いけばな作家の州村衛香さんは、昨年末、東京の「ポーラ ミュージアム アネックス」という“超一等地”で、ある生け花の作品展を主宰した。州村さんの“お弟子さん”による作品が並んだわけだが、これが、無名の作家にもかかわらず、やんやの大盛況だった。

州村衛香(すむら・えいこう)
草月流いけばな作家の第一人者として作家活動、いけばな指導、指導者育成など活動は多岐に。いけばな使節として外務省より海外へ派遣されるなど、世界20カ国以上で、いけばなの普及・発展のためにデモンストレーション、ワークショップをおこなう。

なぜなら、弟子たちは、生け花界では名前は知られていないが、みな有名企業のトップたちだったからだ(展示会名は「ビジネスリーダーたちのいけばな展))。

なぜ、経営者たちは生け花を始めたのか。

一本の花の命を大切にしながら、花を生けることで自分と対峙する。生け花の精神性は世界でも高く評価されている。そしてその世界観には、ビジネスに共通する点が多々ある、と州村さんは話す。

「自分の思い描く世界観を花などで表現するには、直観力、判断力、決断力、集中力が求められるほか、創造性や俯瞰する眼も必要とされます。これらは文字通り、瞬時にあらゆることを自分で決断しなければならないビジネスシーンと同じ。花を生けるということは、こうしたスキルの鍛錬の場にもなりうるのです」(州村さん)

聞けば、区切られた空間のなかで自分を表現する生け花は、室町時代に原型が成立して以降、600年近くに渡って受け継がれてきた日本の伝統文化だという。戦後、女子教育に取り入れられ、花嫁修業のひとつとなったことが、生け花=女性のものという固定概念の始まりだ。しかし、州村さんは語る。

「もともとは茶の湯や書などとともに、貴族階級や武士のたしなみとして広がったもの。現代のビジネスマンたちが魅了されるというのもうなずけます」