企業における導入の実例
【甲斐】ワークスタイル変革の導入は、企業で実際にどのように進んでいるのでしょうか。こういった業種がうまく導入しているというような例を教えていただけますか。
【鵜澤】一般顧客との関わりが大きいビジネスにおいて、特に顧客接点の現場で新しいデジタルテクノロジーの活用が進んでいます。これは顧客に近いところにいるために、顧客の動向に感度が非常に高く、そのニーズに応えていくためには、便利なツールを自分たちでも活用する必要があるからです。
例えば不動産業では従来、賃貸物件は図面を見せた上、クルマで現地を回っていましたが、これはかなり効率が悪いものでした。それが最近ではWebで物件を見たり、バーチャルリアリティで部屋を覗いたりして、最後に迷っている物件だけを実際に内覧することで効率が大きく向上しました。また製薬業の営業では、医師とのコミュニケーションにおいて、訪問頻度よりも、新しい医薬情報をどれだけ伝えられるかが重要視されるようになり、資料も紙配布よりも、医師とネット上でカンファレンスを開くような、デジタルテクノロジーを利用してリアルタイムに臨場感のある情報をスピーディに伝えるやり方に変わってきています。
【甲斐】顧客との接点におけるサービスの質の強化によって、営業力を強化しようという試みですか。少し前に企業にタブレットが導入されたときは、役員や部長などマネジメント層の意思決定支援が主な用途でしたが、それが変わってきたということですね。
【鵜澤】現在のトレンドは、企業にとって成長の源泉でありROIの可視化もしやすい営業部門がターゲットで、これをどう強化し営業力を向上させていくかが鍵となります。営業部門以外では、経営企画や新規事業企画などでも導入の動きが出ています。なにか新しいものを生み出すにはオフィスで座っているのではなく、外で誰かとディスカッションしたり。現場で何が起きているかを見て、感じることが必要という意識が高まっていることもワークスタイル変革の動機につながっています。