日本の総人口は2008年をピークとして減少が始まった。政府は少子化対策を打ち出しているが芳しい効果は出ておらず、残念ながら今後もこの傾向が変わる見込みは薄い。人口の減少は先進国の多くに共通する課題だが、日本においては急速な高齢化の進行と相まって年齢層別人口構成も大きく変化しており、総人口減少を上回るペースで労働力人口の減少が進んでいる。15~64歳の人口は2012年を基準とすると2020年には約9%、2030年には約15.5%、実におよそ124万人も減ってしまう。
この現実を前に企業が業績を伸ばしていくには、これまでの働き方を変え、生産性を大きく引き上げる「ワークスタイル変革」が必要だと言われて久しい。ではワークスタイル変革を成功させるためには何が重要なのか。企業におけるワークスタイル変革の成功例・失敗例を数多く知るデロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 鵜澤慎一郎氏と、日本HPパーソナルシステムズ事業本部 パーソナルシステムズ・マーケティング部部長 甲斐博一氏による対談で学ぶ。

ワークスタイル変革が必要とされる3つの背景

株式会社 日本HP
パーソナルシステムズ事業本部
パーソナルシステムズ・マーケティング部
部長 甲斐博一氏

【甲斐博一氏】なぜ働き方を変えなければならないのかという議論の出発点は就業労働人口の減少ですが、企業規模に関係なく直面するこの問題に対して、企業は何をどのように捉えていけばよいのでしょう。

【鵜澤慎一郎氏】まず、企業に求められることは、人材の“質”と“量”の劇的変化が起こりつつあることへの危機意識を高めることです。2050年の労働人口はいまの半分以下になってしまうという予測もあります。次に、先進国の中でずば抜けて低い生産性は日本企業の積年の経営課題です。現状のまま人口×生産性で見るなら10年後、20年後の日本企業の状況は相当厳しい。企業の規模や業種には関係ありません。課題解決にむけた全社的な取り組みが求められています。

また、グローバルビジネスの進展とテクノロジーの進歩も大きな影響を及ぼしています。海外など遠隔地とビデオ会議をすることも多くなりましたが、時差は克服できません。これまでは例えば北米とのビデオ会議ならどちらかが早朝か深夜にオフィスに集まっていましたが、これはナンセンスです。いまや自宅や出張先から必要なデバイスを使って参加すればいいのですから。

【甲斐】労働人口の急速な変化、生産性向上、グローバルビジネス対応の3つが、ワークスタイル変革が求められる背景ということですね。それを実現できるテクノロジーが進歩し、劇的に安く簡単に手に入るようになったことも重要であると。

【鵜澤】モビリティデバイスの普及やユーザーインターフェースの進化によって、ITやガジェットに詳しくない一般のビジネスパーソンでも扱いやすいものがたくさん出てきました。それらはビジネスに関わる誰もが自由に使えるツールとして、ワークスタイル変革を後押しする状況が生まれています。