2016年3月27日(日)

なぜ「自宅で死ぬこと」はこれほど難しいのか

命を紡ぐ 現場の声【2-前編】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
船戸 崇史 ふなと・たかし
船戸クリニック院長

船戸 崇史1959年岐阜県生まれ。愛知医科大学医学部卒業後、岐阜大学第一外科に入局。数々の病院で消化器腫瘍外科を専門に。しかし、「がんには自分のメスでは勝てない、ならばがん患者を在宅で看取る手伝いをしたい」と、1994年岐阜県養老町に船戸クリニックを開業。西洋医学を中心に東洋医学や補完代替医療も取り入れ、全人的な治療、診察を行っている。

船戸クリニック 院長 船戸崇史 取材・構成=田中響子
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超高齢化の時代を迎え、ますます、死亡者数が増えていく日本。一人ひとりが死に対する考え方や、死生観について考える時期に来ています。最後まで患者さんに寄り添える医療を行いたいと、在宅医療を行う船戸クリニックの船戸崇史先生は、「健全な死」を選択できる大切さを訴えます。

人はがんが治ってもいずれ死ぬ

船戸崇史・船戸クリニック院長

私は、消化器腫瘍外科医として、12年間の勤務医を経て開業しました。勤務医時代は、メスで患者さんのがんを治すことに力を注いでいました。しかし、メスをもって10数年目にふと気が付きました。「人はがんが治らなかったら死ぬが、がんが治ってもいずれ死ぬ」。つまり、「人は等しく死ぬ」のです。その現実に突き当たり、自分のやっていることに疑問を感じるようになりました。そして、手術で治そうとするより、「最期まで患者さんに寄り添った医療」に関心が向かい、在宅医療のできる開業医となったのです。

我々医師は医学部に入学してから、「病気を治す」ことだけを学びます。しかし、これは同時に「死は罪悪」「死は敗北」ということなのです。事実、「死に負けてはならない」と歯を食いしばる気持ちが医学をここまで発展させ、日本は長寿国になってきたと思っています。それは紛れもなく現代医学の功績です。

しかし、どんなに最善を尽くして手術や治療に成功したところで、最終的に人は死んでいきます。

私のところには、余命宣告をされた末期がんの患者さんや、他の医療機関で治療法がないと言われ、絶望された患者さんが多くいらっしゃいます。医師から匙を投げられるほどショックなことはありません。確かに、治癒を目的としている西洋医学では、末期がんの患者さんにできることはありません。しかし、それは“西洋医学の場合”なのです。

東洋医学や伝統医学など、最後の最後まで患者さんに対応できることはあります。痛みを和らげたり、自己免疫力を上げるような療法はいろいろあるのです。私も医者ですから、きちんと自分で調べて判断した上で、患者さんにとって有益なものを採用するようにしています。

なぜなら、患者さんや家族は、やはり最後まで希望を捨てたくはないからです。どんなことをしても助かるものなら、少しでも良くなるのならと最後まで望みをかけて治療法を探します。本来、患者さんへのサポートが医療者の務めなら、患者さんが生ききることを最後までサポートすることも医師の役割だと考えています。

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