2016年3月29日(火)

「どう伝えるか」より「どうしたら伝わるか」を自問せよ

経営トップ直伝「100%落とす! 口説きの技術」:マネックス証券社長CEO 松本大

PRESIDENT 2014年12月15日号

山口雅之=構成 的野弘路=撮影
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1日で、思わず聞き惚れてしまうほど、「話が面白い人」がいる。私もそんなふうに変身したい! これさえマスターすれば、簡単になれる効果抜群の方法を伝授しましょう。

そもそも私は、話すのが上手いか下手かを意識したことはありません。ただ、現在と比べると、若いころの私の話は、相手に十分伝わっていなかったかもしれません。その意味では、決して上手ではなかったように思います。

コミュニケーションには必ず、相手に「こう動いてほしい、こう思ってほしい」という目的があります。私がそのことに気づいたのは30代前半、ゴールドマン・サックス証券のゼネラル・パートナー(共同経営者)を務めていた時代です。

マネックス証券社長CEO 松本大 1963年、埼玉県生まれ。開成高校、東京大学法学部卒。ゴールドマン・サックス証券ゼネラル・パートナー(共同経営者)を経て99年にマネックス証券を設立、現職。

あるとき、東京駐在のもう一人のゼネラル・パートナー、ジョージの秘書であるNさんから、「どうもジョージとうまくいかないのですが……」と相談を受けました。

彼女は、ゴールドマンの東京支社では私よりも経験が長く、英語も堪能で、非常に有能な人です。一方、ジョージも、私が知っているかぎり悪い人間ではありません。要するに、2人は馬が合わなかったのです。そこで私は彼女に「ジョージはいい人だから、思っていることをちゃんと言ったほうがいいよ」とアドバイスしました。

「わかりました。ダメもとでジョージに話をしてみます」。Nさんは素直にそう答えました。ところが、その返事を聞いた私の口からは、自分でも意外な言葉が飛び出したのです。

「Nさん、それは違う。ダメもとじゃダメ。絶対にわかってもらうんだという強い気持ちで話さないと、何も伝わらないし、わかってもらえないよ」

当時、私は全世界のゴールドマンのゼネラル・パートナーの中で最年少。ですから部下には年上の人が多く、おまけに外資系なので言葉の壁もあって、社内のコミュニケーションにはものすごく苦労していました。相手にどうやってこちらの意図を伝え、希望どおり行動してもらえるかということが、いつも頭の中にあったのでしょう。だから、Nさんの「ダメもとで」という言葉に、「違う」ととっさに反応したのだと思います。

そして、Nさんにそう言ったことで、コミュニケーションの本質は相手を変化させることなのだという事実を、自分でもはっきり自覚することができたのです。いま思えば、まさしくそこが転換点となって、以後私のコミュニケーションは、それを意識したものに変わっていきました。

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