大切なのは“複眼的な視点”で相続と向き合うこと

2016年3月26日(土)

大切なのは“複眼的な視点”で相続と向き合うこと

PRESIDENT 2016年4月18日号

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相続にまつわるトラブルが増えている。もめない相続は誰もが望むものだが、それを実現するためには何が必要なのか──。弁護士、税理士として、数多くの問題を解決してきた長谷川裕雅氏に聞いた。

長谷川裕雅●はせがわ・ひろまさ
東京永田町法律事務所 代表


弁護士・税理士。早稲田大学政治経済学部を卒業し、朝日新聞社入社。その後弁護士に転身。大手渉外法律事務所や外資法律事務所を経て独立。事業承継や相続問題の解決に尽力する。著書に、『磯野家の相続』『最新版 磯野家の相続税』『モメない相続』『家族内ドロボー』など。

 

 

社会や家族の形の変化が相続に影響している

──昨年1月に相続税が増税になりました。その後、一般の人たちの意識の変化などを感じることはありますか。

【長谷川】メディアを通じてさまざまな情報が発信されるなか、相続に関する知識を蓄えた方が増えている印象です。相続のセミナーなどで講師を務めることがありますが、来場者からの質問内容がとても具体的になってきました。

それ自体はよいことだと思うのですが、一方で相続やその税制は非常に専門的な分野です。例えば相続税対策の有効性なども、制度の改正によって変化します。偏った知識が間違いを引き起こすこともあります。ピンポイントで情報を収集し、対応するのではなく、総合的な判断を意識することが重要でしょう。

──相続にまつわるトラブルや紛争も増加傾向のようです。背景としてどのようなことが考えられますか。

【長谷川】一つには、社会の変化があると思います。例えば平均寿命が延びるなかで親が子より長生きするケースも増えてきています。この場合、孫などが遺産を受け継ぐ代襲相続が発生し、相続人が増えることになる。また、離婚や再婚、子どものいない夫婦が増え、家族の形も変わってきています。いままであまりなかった形の相続が増え、トラブルにもつながっているように思います。

また一方で、コミュニケーションの希薄化もあるでしょう。都市部と地方に家族が離れて暮らしていると、話す機会は少なくなります。親と同居している子どもと、離れて暮らしている子どもとの間で情報の格差が生まれてしまい、いざというときにもめてしまうのです。

相続というのは、家族の間に“法律”が持ち込まれるということ。例えば、家族間でのお金の貸し借りを、法律で清算することです。トラブルを抑えるためには、やはり事前の対策が必要です。家族間の情報格差をなくす努力をする。また親が高齢になってきたら、子どもの側がある程度リードして対策を講じるのが良いでしょう。

正しい知識があれば選択肢は増える

──相続税対策として、押さえておきたいポイントはありますか。

【長谷川】具体的なものでいえば「小規模宅地等の特例」や「貸家建付地の評価減」などがあります。要件に合致すれば、不動産の相続税評価額を大きく減らすことができます。

また、生前贈与も頭に入れておきたいものの一つです。年間一人あたり110万円までの贈与であれば贈与税がかかりません。5年、10年というスパンで考えれば、大きな節税効果を発揮します。

こうした特例や制度を実際に活用するかどうかはそれぞれの状況や判断によるでしょうが、知っているか、いないかは大きな差です。正しい知識があれば選択肢は増えます。

そしてもう一つ、財産を分けやすい形にしておくことも大事です。財産が不動産だけの場合、その分割を巡ってトラブルが起きやすいことはご存じのとおりです。相続税の支払いを考えても、分けやすく流動性の高い資産を確保しておくことは有効です。