彼らには愚痴も陰口もない。思ったことを思ったとおりにストレートに述べて、腹蔵なく夢を追いかけた。そうやって成功した彼らは、ただ運がよかっただけだろうか。逆のことを考えてみよう。運が悪い人は、往々にして他人の言うことを是として、本来の自分を殺して生きている。これは大きなストレスだ。自分が誤っていれば他人の忠言を聞き入れるべきだが、そうでなければ人の言うことなど聞く必要はない。場の空気を読んでばかりいると、自分を失い、悪運の連鎖にはまり込む。その点、孫君や澤田君たちは空気など読まない。自ら信じた道を行き、運を招きよせたのだ。

最近、電動バイクのテラモーターズを興した徳重徹君が僕の事務所を訪ねてきてくれた。彼は九州大学を出て一流の保険会社に入社したが、30歳を過ぎた頃会社を飛び出した。アメリカの経営大学院に私費留学し、シリコンバレーで経験を積んだのち日本でテラモーターズを起業したという。なぜ一流企業を辞めたのか。簡単に言うと、自分の思いに対して正直に行動したということだ。もちろんリスクは大きい。だが、悔いなく自分に正直に生きれば、100%以上の力が発揮できるし、少数の強い味方が現れる。孫君や澤田君と同じである。これこそが、大成功につながる行動パターンなのだと僕は言いたい。

財団法人日本総合研究所会長 野田一夫
1927年生まれ。東京大学社会学科卒業。立教大学教授として社会学部観光学科(現観光学部)設立に尽力し、初代学科長。その後、多摩大学・県立宮城大学の初代学長を務め大学改革を進める。学界での活躍にとどまらず、ニュービジネス協議会初代理事長など財界の要職も歴任。孫正義氏ら名だたる起業家が師と慕う。
(宇佐美雅浩=撮影)
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