2016年1月31日(日)

中国、韓国、インド、中東……「それは失礼」大辞典

PRESIDENT 2013年4月29日号

著者
中島 恵 なかじま・けい
ジャーナリスト

中島 恵1967年、山梨県生まれ。90年、拓殖大学外国語学部中国語学科卒業後、日刊工業新聞社入社、国際部、流通サービス部などで記者として活躍する。94年に同社退社、香港中文大学に留学、北京語と広東語を学ぶ。96年に帰国後、フリージャーナリストに。著書に『職は中国にあり』『ポジャギ』『中国人エリートは日本人をこう見る」、『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』(中央公論新社)などがある。

執筆記事一覧

ジャーナリスト 中島 恵=文
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「えっ、そんなことで怒られるの?」新興国の文化やマナーは、日本人にとってともすれば欧米よりわかりにくいもの。ビジネスに役立つ習慣を紹介しよう。

ちょっと小耳にはさんだ話なんですけどね。インドのある日系工場で、日本人の上司がインド人の部下に汚れた作業デスク回りを掃除するように、と命じたそうなんです。そうしたら、部下は『掃除は自分の仕事じゃありません。掃除は下のカーストがやる仕事ですからやりません』と拒否したんだそうです」

こう語るのは大手メーカーでインドや韓国など世界9カ国に駐在した経験を生かし、現在、海外経営のコンサルティングを行っているシンクグローブ・コンサルティング代表の糸木公広氏だ。インドは日本人が知る4つのカースト以外にも実はさらに細かいカーストがあり階層は複雑。日本人なら自分のデスク回りをちょっと掃除することぐらい当たり前だが、インドではそうはいかない。

「職人気質だった日本人上司は怒って自分でほうきを持って片付け始めた。それを見たインド人社員たちもしぶしぶ掃除をし始めたのですが、たまたま日本からきていたスタッフがその姿をビデオに撮ろうとしたところ、社員たちは『やめてくれ。こんな姿を公にされたら末代までの恥だ』と慌てたとか。インドではそれだけカースト制度の影響が大きく、自分の仕事以外はしないのが原則。日本人にはわかりにくいことですね」

ささいな出来事にすぎないが、労務管理の難しさを考えさせられる深いエピソードだ。こういうときは掃除担当の人を別に雇うか、机をきれいにする合理的な理由を説明するところから始めたほうがいいと糸木氏は語る。

インドといえば、昨年スズキの現地工場で起きた暴動をすぐに想起する人もいるだろう。結局、暴動の原因は特定できなかったが、憲法上は廃止されているカーストが今もインド社会に根強く残っていることを痛感した人も多いはずだ。下位カーストの人を昇進させても、上位カーストの部下が無視してビジネスがスムーズに運ばないといったことも実際に起きている。複雑なインド社会を日本と同じ目線で見ると思わぬ騒動に巻き込まれてしまいかねない。

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