がんに罹る、そのショックは計り知れないものだろう。しかし、現実は病人にも容赦ない。病院・治療法の選定、仕事の引き継ぎ、休職期間、治療費……今から備えるべきことを訊いた。

【1】慌てない。病気の情報を、しっかり得る

がん宣告されれば誰もが落胆し、絶望的な気持ちになるに違いない。だが、就労世代のがん患者における就労・雇用の実態の調査・支援などを行うCSRプロジェクト代表で、自身も乳がん治療をした桜井なおみ氏はこう語る。

「動揺するのは当たり前、それでいいんです。でも、とにかく落ち着くこと。がん細胞は何年も前から体内にいたのです。今さら焦ってもしかたない。私は宣告を受けた直後、夫とカフェに行ったのですが、それで『なっちまったものはしかたない』といい意味で開き直れた。これがよかった」

そして慌てず騒がず、ゆっくりと今後のTO DOリストをつくる。

「検査で何かあると、すぐに仕事はどうしようかと気になるでしょう。でも、逆に仕事に集中できないこともありますから、場合によっては休んで現状を知ることに注力しましょう。怖がらずに精密検査を受け、がんの部位、種類、進行度(がんの大きさ、広さ、深さ、転移の有無)を確認します」(桜井氏)

そのうえでガイドラインに応じた治療法を選ぶ。選択肢として、最近では身体への負担が小さい内視鏡治療や、遠隔への転移が認められ手術ができないときの化学療法など複数ある。

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一般的な乳がん治療の流れ(例)

「最近、『先進医療』にこだわる患者が目立ちます。松竹梅の松でなきゃ、と。でも、先進医療は症例数がまだ少なく、ある意味“テスト段階”のものもあり、治療費も高額です。逆に、標準治療は治療効果にエビデンス(科学的根拠)がある最善の策。それを日本では3割負担で受けられるのです」(同)

ところで、順序が逆になったが病院はどう選べばいいか。「行政が指定している全国397カ所のがん診療連携拠点病院でもいいし、自分のがんの専門医がいる病院でもいい。仕事中に通院するなら会社の近くの病院や、自宅と会社の中間にある病院など、納得できる病院選びが大切です」(同)