顔は口ほどに物を言う──。人間の外見には多くの手がかりが隠されている。卒業アルバムから将来が見抜けることを発見した気鋭の心理学者、デポー大学心理学 マシュー・ハーテンステイン准教授が顔を読む方法を解き明かす。

5歳の子供が外国の選挙で勝利する人物を予測できる――。あなたが友人にそう話したところで、疑いの目で見られるのがおちだ。だが、これはスイスの研究チームが実験して、「サイエンス」誌に掲載されたまぎれもない事実である。5歳から13歳のスイスの子供に対し、フランスの国会議員選挙の立候補者の顔写真を見せて、当選するだろうと予測する人物を選ばせる。子供は候補者のバックグラウンドについてはまったく知識を持っていないので、先入観なしに選ぶ。子供が選んだ人物は、71%の確率で当選した。その確率は大人による同人物の当選予想正解率とほぼ同じであった。民主国家での選挙といえども、我々が無意識のレベルで選択しているという事実は恐るべきことである。

私たちはほんの数秒で、顔が発しているさまざまな手がかりから相手の性格を判断している。しかもその能力は人の一生のかなり早い時期から発達しているのだ。

顔立ちがどれほど無意識に影響を与えているか。もう1つ例を挙げよう。フィラデルフィアで行った調査で、有罪判決を受けた殺人犯の顔写真を比較した。アフリカ起源の顔の特徴(横に広い鼻、厚い唇、黒い肌)をした被告人は58%の確率で死刑に処されているが、アフリカ起源の顔の特徴を持たない被告人が死刑になる確率は24%だった。2倍以上の差が出たわけだが、対象は全員アフリカ系アメリカ人なので、人種差別が原因ではない。「顔による差別」にほかならない。

死刑に処するという重要な判断は、100%証拠に基づいて下すべきことであると頭ではわかっていても、不条理なまでに無意識のレベルで顔立ちが影響しているのである。顔立ちが社会のいろいろな面で恐ろしいほど影響しているのである。

あなたと私がある人の顔を見たら、その人が誠実か、信頼できるかなどについて、ほぼ同じ予測をすることになる。このことは一歩間違うと、不幸を招く可能性もある。本当に重要なのは、相手の顔を手がかりにして、性格や今後のふるまいを“正確”に予測できるかどうかだ。

私の専門は心理学だが、それは発達心理学、実験心理学などさらに細かく分かれる。が、「予知心理学」という分野はない。そもそも心理学という学問は行動や他の要素から性格などを予知する学問なので、特に「予知心理学」という分野は存在しないのだ。私が研究したことは“The Tell”(邦訳『卒アル写真で将来はわかる 予知の心理学』)にまとめたが、予知する手がかりとなる要素は複数ある。その中で非常に興味深いものが「顔」である。

今回は、最新の研究結果をふまえ、日本のビジネスマンが気になるであろう「出世する顔」「結婚が長続きする顔」「殺人者の顔、殺される顔」という3つのテーマについて解説していくことにしよう。