2015年9月18日(金)

山一證券、ソニー、東芝「沈没する会社の共通点」

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PRESIDENT 2015年10月5日号

著者
大高 志帆 おおたか・しほ
ライター

大高 志帆ライター歴7年。同志社大学経済学部卒業の独身アラサー女子。ビジネス誌と女性誌の二足のわらじを不器用に履き分ける。好きなモノはピンクとリボンとサンリオキャラ。最近ハマっているのはスマホゲーム「Candy Crush」。悩みはfacebookにあまり「いいね!」がつかないこと。

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大高志帆=文 加藤ゆき=撮影 時事通信フォト=写真
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働きやすい会社こそ潰れやすい

──「日本の終身雇用制度が終わった」と言われて久しい。近年では、名だたる大企業とて倒産やリストラと無縁ではないのだ。山一證券やソニーの社員たちを取材し、ノンフィクション作品を発表してきたジャーナリストの清武英利氏に、潰れる会社や問題のある会社の共通点を聞いた。

意外かもしれませんが、潰れる会社、大きな問題を起こす会社は、緩く働いている人にとっては“いい会社”なんです。私は破たん前後の山一證券も取材していましたが、『しんがり 山一證券 最後の12人』の執筆のために十数年ぶりに元社員の方たちに話を聞いて、改めてそう感じました。たとえば野村證券と比べても、ノルマは厳しくないし、締め付けも激しくない。だから、社内の雰囲気もギスギスしていない。かつては“人の山一”と呼ばれていたほどの企業ですからね。きっと、人間的に優しい人、悪い言い方をすれば他動的な“善い人”も多かったのでしょう。他社が裁判を起こしてまで取引先に損失補てんを求めていたときも、山一證券はそうしなかった。できなかったのかもしれません。それが2600億円もの帳簿外債務、ひいては自主廃業につながっていったのです。優しいということは、つまり自分にも他人にも甘いということなんです。そういえば、不適切会計が明るみになった東芝も“働きやすい会社”の代表のように言われていましたよね。

社員の再雇用を訴える山一證券の野澤正平社長。(時事通信フォト=写真)
──問題のある企業の人間は、得てして甘い。それゆえにどうしても嫌なことを先延ばしにしてしまい、事態が収拾のつかないところまで進んでしまう。どうすればこの“先延ばし”の構造を回避できるか。

「何かおかしいな」と感じたときに社員が速やかに行動できるか、しかるべき部署に通報できるか。社内のアラートシステムがスムーズに機能するよう工夫するのが上層部の役目です。「そもそも人間は弱いものなのだ」と肝に銘じて、それを前提にシステムを構築していかなくてはいけない。ですが、沈没していく多くの企業はそれができていません。たとえば上司が不正を行ったとき、衝突を恐れ、出世コースからはじかれることを恐れれば、部下は必ず“見て見ぬふり”をします。私たちは“背信の階段”と呼んでいますが、そうやって企業内には不正に目をつぶる人たちの長い階段がつながっていくのです。かつての山一證券がそうだったし、きっと東芝も同じだったのでしょう。明るみに出たのは最近でも、不適切会計に気づいていた社員はたくさんいたはずです。

ソニーに関しては、また別の問題がありました。出井伸之社長の時代から、ソニーでは“プロ経営者”とでも呼ぶべき社外取締役が圧倒的に増えたのです。ものづくりの会社の経営陣がものづくりを経験したことがない、というのがそもそもの間違いですが、アラートシステムの機能を考えれば、社外取締役が圧倒的多数なのも大間違い。その必要性はわかりますが、社内の人間でさえチェックしきれないようなことを、もっぱら社外の人間にさせようとしても無理でしょう。

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