日本経済団体連合会(経団連)が今年から(対象は来春卒業予定の大学生)会員企業に要請した新たな採用選考指針(ガイドライン)は、スタートから出鼻をくじかれた。学業を優先させ、長期化する一方の学生の就職活動に一定の歯止めをかけるため、面接など企業の採用活動解禁を昨年までの4月1日から8月1日に繰り下げたことが裏目に出て、採用指針を抜け駆けする裏切り者の会員企業が続出したからだ。

就職情報会社・リクルートキャリアの調査によると、解禁日時点で企業の内々定を得た学生は64.4%に達し、解禁半月後の8月15日時点には70.6%に跳ね上がった。昨年は解禁1カ月後の内々定は47.7%だったことを考えると、企業側の採用活動の過熱ぶりがうかがえる。同に、多くの企業が解禁日前から水面下で学生と接触し、選考していた事実を裏付けた。

調査によれば、解禁日に先立ち学生に内々定を出した企業は、経団連の会員企業ばかりではない。会員でなく採用指針に縛られない外資系や、採用難の中堅・中小の企業が激しい新卒者争奪戦を想定し、内々定を出したケースは十分考えられる。しかし、解禁日以降早々に採用活動の打ち止めを宣言した会員企業もあり、「掟破り」の事実は否めない。景気回復から学生側にとって空前の「売り手市場」だった背景もあり、経団連の採用指針はスタート早々に形骸化してしまったと言える。

ただ、そのとばっちりは内定辞退者が相次いだ中堅・中小、学生に人気の低い大企業に跳ね返り、採用活動のやり直しを迫られた。これには日本商工会議所の三村明夫会頭が「まじめにやったところが損をする。看過できない」と発言し、経済同友会の小林喜光代表幹事も「抜け駆けを許してはいけない」と、財界からも批判の声が上がった。安倍晋三政権の要請で採用活動期間を後倒しした経団連は大誤算で、榊原定征会長は「(元に戻すのも)選択肢にある」と採用指針の検証を余儀なくされた。このままでは「新就職協定」も、形骸化から1997年に廃止された「就職協定」の二の舞いになりかねない。