2015年9月10日(木)

妻のご機嫌はなぜ、すぐに悪くなるのか?

PRESIDENT 2015年3月2日号

著者
土屋 賢二 つちや・けんじ
お茶の水女子大学教授

土屋 賢二1944年、岡山県生まれ。哲学者。東京大学文学部哲学科卒業。同大学院博士課程退学。現在、お茶の水女子大学人文科学科教授。2002年から2年間、文教育学部長を務める。週刊文春に連載中のエッセー「ツチヤの口車」が大人気。哲学的考察に基づいた詭弁的論理にうっかりはまって、中毒になる読者が多い。「本業は棚直しだが、本業も副業もうまくいっていない。哲学、エッセーおよびピアノの資格も持っていない」。しかし、「人柄は温厚篤実な紳士で、芸術を愛する嘘つき」とは本人の言。

ユーモア・エッセイスト 土屋賢二
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「ウチもできた妻なら」とため息をついていませんか。“笑う哲学者”土屋賢二氏が結婚の神髄を語り尽くします。

女と電気製品を一緒にしてはならない

女を扱うのは、火薬庫でタバコを吸うようなものだ。その証拠に、それを聞いただけで女は「〈扱う〉とは何事か。電気製品みたいに言うな」と怒るだろう。もちろんわたしは女と電気製品を一緒にするつもりはない。電気製品は維持費がほとんどかからず、寿命がくれば文句も言わず黙って故障するだけだ。女とは大違いだ。

女は簡単に怒る。怒る原因は無数にある。しかもたいていなぜ怒っているのか理由がわからない。理由を聞くとさらに怒るから聞くに聞けず、どこを直せばいいのかわからないままだ。

以前、妻が女友達数人と旅行に行ったとき、中の1人の携帯にそのダンナから「こちらは月がきれいです。そちらはどうですか?」というメールがきたので、その奥さんは怒って直ちに消去したという。妻はわたしにその話をして「ひどいでしょう?」と同意を求めた。だが、このメールがなぜひどいのか、理由がわかる男がいるだろうか。

何もわからないまま、「たしかにひどい」と同調することしかできなかった。見当違いかもしれないが、女は「こっちは旅行で楽しく騒いでいるのに、なに浸っとんねん!」と怒っているのではなかろうか。

もちろん、怒っている本人には、なぜ自分が怒っているのか、10回のうち4回は理由はわかっている。以前、女子大で教師をしていたとき、学生に「自分がボーイフレンドになぜ怒っているかわかっているか」と聞いたところ、全員が悪びれることなく「わかっていないこともある」と答えた。

昔、ある太った中年女に「体重はどれぐらいあるの?」と聞いたところ、「そんなこと言えるわけないでしょう」と怒られたので、「じゃあ、下2桁だけ教えて」と言うとさらに怒られた。ヒントを聞いても怒るのだ。

また昔つき合っていた女に「A子ちゃん、スッピンもきれいだね」とホメたところ、「何時間かけてメークしてると思ってるの? それにわたしはA子じゃないっ!」と激怒した。こんなわずかなミスにも怒るのだ。

しかも怒り方が不条理だ。妻が出した期限切れの食べ物を食べて男が具合が悪くなったら、「どうしてそんなに弱いの」と男を責める。買った服をホメなかったら「見る目がない」と言って怒る。女を見る目がないのはたしかだが、自分の意思でどうにもならないことを怒るのは、尻尾が生えていないといって怒るようなものだ。

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