日韓は互いに「嫌いな国」

現在、日本と韓国の間では、慰安婦問題ほかさまざまな案件で政府間の関係が冷えきっており、両国相互の国民感情もきわめて悪い状態です。

私は外務省の助成を受けて、2014年11月から12月にかけ、日本・中国・韓国の3カ国で国際意識調査を実施しました。調査によれば、日本を「大嫌い」「嫌い」とした割合が最も高い国は韓国、次いで中国です。

日本から見ても「嫌いな国」の1位、2位は中国と韓国ですから、2国間関係がぎくしゃくしているという点では、日中も日韓も同じです。ただ、日中間では折に触れて首脳会談が開かれ、緊張緩和が進む可能性があるのに対して、最近の日韓関係は首脳会談も開けないほど悪化しています。

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韓国国民の各国別悪感情

なぜ「日韓」だけ、こんなに関係がこじれてしまったのでしょうか。

戦後の日韓関係におけるエポックメーキングな年を挙げるなら、大日本帝国による朝鮮統治が終わった1945年、日韓基本条約が結ばれた65年、韓国が民主化宣言した87年、アジア通貨危機が起きた97年、そして李明博大統領が、同国が実効支配する島根県の竹島に上陸した12年です。

両国の現在の不仲を決定づける要素はいくつかありますが、1つめは日韓基本条約締結時の行き違いです。

条約を締結したのは、軍事政権を率いる朴正煕大統領です。朴氏は、日本との間の賠償問題を解決するため、日韓請求権協定を結びました。これにより、日本から韓国に対し、5億ドル(当時のレートで1800億円)の経済援助金が支払われることが定められました。

協定には、両国政府が「国民の間の請求権に関する問題が(中略)完全かつ最終的に解決されたことを認める」旨が明記されており、それが現在、日本政府が「慰安婦や徴用工に対する補償はすでに終了している」と主張する根拠となっています。しかし、このとき日本側から支払われた賠償金は、韓国の国家予算として使われてしまい、元慰安婦、元徴用工といった個人に還元されることはありませんでした。その後、慰安婦や徴用工問題に関して、韓国が理不尽な要求を出してくる背景には、こうした韓国側の国内問題があるのです。

それよりも重要なのは、韓国における民主化です。韓国では、全斗煥大統領の政権委譲後に次期大統領候補となった盧泰愚氏が「民主化宣言」を行い、1987年に選挙を実施し、大統領に当選します。以後、韓国政府は、民意や支持率を気にかけなければいけなくなります。折しも冷戦終結で「反共」が大きなインパクトを持たなくなったこともあって、反日は韓国国民の愛国心に訴える便利なカードと見なされ、大統領の支持率が低下すると反日を煽る傾向が強く出てきたのです。