世界で100万人――猪子寿之氏率いるチームラボの企画展に訪れた人の数だ。「21世紀の日本をつくってほしい人」と田原氏が評する彼の話は、日本人の美意識からデジタルテクノロジーの可能性、そして教育の未来にまで及んだ。

答えを覚えるより答えを創る練習を

【田原】もう一つ、「学ぶ!未来の遊園地」のほうも聞かせてください。この「学ぶ!」はどういう思いを込めているのですか。

【猪子】なんといったらいいのかな。いま僕がやっている仕事って、よくわからないじゃないですか。

【田原】うん、とてもおもしろいけど、よくわからない(笑)。

【猪子】少なくとも僕が子どものころは、僕がいまやっていることが仕事になるなんて大人は誰も想像していませんでした。これはきっと未来も同じで、いまの子どもたちが大人になるころは、いままだない職業だらけになっていると思うんですよ。そして、いまよりもずっと、共同的で創造的であることが重要になっていくと考えています。つまり子どもたちは「Co-creation」を体験したほうがいいと思うんです。

【田原】「Co-creation」を日本語でいうと、「共創」ですね。

【猪子】そう。でも、日本の教育はそうなってない。普通の学校では答えのある問題ばかり出されて、答えを覚えることを求められる。そんなのはまったく創造的じゃない。本当は新しい答えを創る練習をしたほうがいいのに、答えのないことをやろうとすると逆に怒られちゃう。それに、日本の学校は個人主義でしょう。テストも1人、受験も1人、家に帰っても1人でスマホ。共同で何かする体験が少ない。

【田原】正解のある問題を1人で解くと先生に褒められる。

【猪子】それで褒められたって楽しくないよね。それよりも創造的であることが楽しい、他の人と一緒に創造すればなお楽しいという経験を子どもたちにさせてあげたい。それが「学ぶ!未来の遊園地」の意味です。単にジェットコースターに乗ったらスリルがあって楽しかったね、という話ではなくて、チームラボの遊園地のアートアトラクションを通して、「Co-creation」のおもしろさを体験して学んでほしいんです。

【田原】いまはネットで個人がつながる時代です。猪子さんが目指す「Co-creation」は、ネット上で人がつながることとは違うの?

【猪子】違いますね。パソコンもインターネットも、基本的には個人の拡張です。パソコンはパーソナルコンピュータで、まさに自分の脳の処理速度や記憶力を拡張させる装置です。インターネットも同じです。グーグルで検索するのは自分の脳が探したいものをもっと広く探す行為だし、フェイスブックも人間関係を増やすサービス。ぜんぶ個人を拡張させようという話だから、自然と他人との関係を意識させるために、アートを拡張しようとしていることとは、そもそも起源が違います。