大地震の衝撃が走り、大津波の惨劇が起き、原発事故の地獄が始まった。

政府や原子力安全・保安院、そして原発事故の直接責任者である東京電力は、「放射能は微量であり、 直ちに生命を脅かすほどのものではない」と説明する。しかし、拡散する放射性物質を浴び続けると、線量・発生源からの距離・浴びた時間次第では微量でも有害だ。

また、地震による「想定外」の津波が事故原因であるかのような物言いがまかり通っているが、これも事実ではない。震災直前の2月28日、東京電力は新潟と福島の三原発17基で計429機器の点検洩れを認めている。想定外どころか、驚くべき規模の管理怠慢である。

問題はさらに根深い。実は5年前の2006年3月1日の衆議院予算委員会分科会で、まさに今回同様の事故への懸念が指摘され、危機を回避するための措置を講じることが「約束」されていたのだ。

質問者は日本共産党の吉井英勝衆院議員、答弁者は二階俊博経産相(当時)と政府参考人の広瀬研吉保安院長(同)。以下はその議事録からの抜粋だ(敬称略)。

吉井「冷却系が喪失するというのが津波による(略)問題」「大規模地震によってバックアップ電源の送電系統が破壊される」「老朽化したものの実証試験を行ったということはどれぐらいありますか」

広瀬「実証試験は行われておりません」

吉井「東電福島第一の(略)6基では、基準水面から4メートル深さまで下がると冷却水を取水することができないという事態が起こりうるのでは?」「……それをどうしていくのか」

二階「今後、経済産業省を挙げて真剣に取り組んでまいりますことを、ここでお約束申し上げておきたいと思います」

必要性を理解して行為を怠れば、それは行政の不作為であり、今回の被災規模を考えればその責任は重大だ。これでは、いま刻々と報じられる説明や発表さえ信じられなくなる。「基本的な事故データが開示されず、状況を把握できない」(吉井議員)ことに誰もが苛立っている。特に3号機は、他の1、2、~6号機と違って猛毒のプルトニウムとウランとの混合燃料が使用されたプルサーマル型。専門家なら10人が10人、最も危険視する原発である。

情報が開示されず“金縛り”に遭ったまま、国民は危機回避の機会を奪われている。