「両立できる雇用」を増やした地域が勝つ!

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男性の家事・育児時間と出生率の関係

正規社員の女性が出産後も切れ目なく仕事を続けられることだけでなく、非正規社員の女性が「両立しながら働き続けられる」こともすごく重要です。

これだけマタハラが騒がれていても、「妊娠しました」と言った途端「雇いどめ」になってしまった非正規社員の話、「復帰しないで」と言われる正社員の話、どこにでも転がっています。これでは安心して子どもは産めません。出産=世帯年収が半分になるわけですから。そんな未来がわかっていたら、今の女性は「結婚=子ども」なので、結婚に向かおうとする気力もなくなります。

例えば、共働き県は福井、山形、富山などですが、福井県は特に出生率が高い。なぜなら女性の正規社員が多いからです。安定しない両立できない仕事がいくらあっても子どもは増えないのだとよくわかる構図です。

消滅可能性都市に講師として呼ばれることが多いのですが、女性がいない県は「嫁募集」をするよりもまず「女性の雇用と定住セット」で対策するほうがいい。「女性が両立できる雇用を増やした地域が10年後には勝つ」といつも言っています。

そして少子化と連動する3つ目の数字は何か?

なんというか「良妻賢母嗜好度」とでもいうのでしょうか? 「良妻賢母が好きでない国の方が出生率が高い」というものです。(ニッセイ基礎研究所 天野馨南子 研究員の眼2014年11月4日)

少子化の国は「日本、イタリア、ドイツ、韓国」など「伝統的家族観」が強いところ。当然良妻賢母が良しとされます。イタリアなんか「マンマ」の国ですし。

この「良妻賢母」へのプレッシャーが女性には「重すぎる」のも、ひとつの少子化の要因でしょう。先日「結婚したら時短がとれるといい」という女性の意見がありました。結婚しただけで時短?

それは「良妻」になるための「良妻時短」ということです。

しかし共働きと良妻の両立はとても難しい。専業主婦だって大変なのに、両立しながらの良妻賢母は女性を追い込む、辛い思想です。男性だって「良夫賢父」はプレッシャーではないでしょうか? 良妻賢母思想が強い国ほど、女性は「よほどの尽くし甲斐のある男性じゃないと、結婚できない」と思って、ますます結婚へのハードルが上がるのです。

「男女ともに、それほど辛くなく両立できる、安定した仕事」があることは、少子化に大きく貢献します。個人ではなく、今企業がどれぐらい「少子化に貢献」できるのかが問われています。しかし、ただ「協力」というのも難しい。国からのプレッシャーが必要です。あるイクメンの男性は「男性の育休取得や子育て中の男性の働き方など、規制してくれたほうがやりやすい」と言っていました。規制があれば、顧客に対しても「すみません。長時間労働は禁止で……。うちコンプライアンスが厳しいので」と言い訳できるというのです。

労働時間の上限を決めた上での柔軟な働き方改革、女性の活躍度の見える化、マタハラ禁止の徹底、非正規社員の雇用の安定など、罰則を決めるのか、それともインセンティブを用意するのか、待ったなしの対策が求められます。

白河桃子
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。講演、テレビ出演多数。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。著書に『女子と就活』(中公新書ラクレ)、共著に『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(講談社+α新書)など。最新刊『格付けしあう女たち 「女子カースト」の実態』(ポプラ新書)