賃貸暮らしが相続税対策になる

親としては、可愛い孫の顔をいつでも見られるし、老後も安心。子としても、住宅購入の負担を減らせるし、子どもの世話もしてもらえる。うまくいけばいいことづくめの二世帯住宅ですが、郁恵さんには気がかりなこともたくさんあります。

「実家は通勤に不便だし、何かとマイペースな母と一緒に暮らすのはちょっと面倒。それに夫は長男で、賛成するとは思えない……」

さて、小規模宅地等の特例が使える条件3を見てみましょう。これは少々わかりにくいのですが、要は「持ち家に住んでいない人が相続すると特例が使える」というもの。ただし、自分が持っていなくても、夫が所有する家に住んでいれば特例は使えません。

たとえば郁恵さんの場合だと、こんなときに条件3があてはまります。「郁恵さん家族がこのまま賃貸暮らしを続け、実家は両親が二人暮らし」→「父の死後、母が自宅を相続して一人暮らし」→「母の死後、郁恵さんが自宅を相続」。持ち家に住んでいる兄が自宅を相続すると特例は使えませんが、賃貸暮らしの郁恵さんが相続すれば特例が使えて、土地の評価を2割に下げられます。

つまり、相続税対策だけを考えれば「賃貸暮らしを続ける」という選択もあり、ということ。賃貸でなくても、たとえば夫の親が所有する家に住んでいる場合なら特例が使えます。もちろん、親の老後の世話をどうするか、という問題は別に考える必要がありますが……。

この条件3は、働く独身女性にもあてはまるケースが多いかもしれません。マンションを買おうかどうか迷っている「おひとりさま」は、親の家の相続のことも検討項目の一つにしたほうがよさそうです。