チラシが安っぽければ大幅値引き可!

「堂々完成!」と大書されたマンションのチラシを見つけたら、それは交渉次第で値切れる物件である可能性が高い。

なぜなら新築マンションは、建物ができあがる前に全戸を売り切る「青田売り」が基本だからである。販売開始とほぼ同時に売り切り、竣工したらただちに入居開始、という流れが一般的だ。

「完成済み物件」広告の甘い誘い文句にだまされるな!
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「完成済み物件」広告の甘い誘い文句にだまされるな!

建物が完成してもまだチラシを配布しているということは、予想外に売れ行きが悪かったということにほかならない。堂々完成という言葉はイメージのいいキャッチコピーだが、私のような業界を知る人間が見れば「ああ、売れなくて困っているんだな」とピンとくる。チラシの紙や印刷がいかにも安っぽいと「販売経費を使い切ってしまって、見栄えのいいチラシを刷れないんだろう」という懐事情すら透けて見える。

建物が完成すれば、当然ながら売り主はゼネコンや工務店に何億円という工事代金を支払わなければならない。正直な話、財源に余裕のない中小デベロッパーは、お客の支払いで工事代金や販売経費をすべて賄ってしまいたいのである。そもそもマンション販売というものは、最後の1~2戸を売り上げるとようやくデベロッパーに利益が出るようになっている。だから多少値引きをしても売り切ってしまわないと、損をするのだ。

そこでまずはチラシに小さい字で書かれている「販売戸数」と「竣工日」をチェック。ずいぶん前に建ったのに、10戸も売れ残っているなら人気のないマンションということだ。駅から遠いとか、近くにラブホテルがあるなどのマイナス要因があるのかもしれない。しかし、車通勤だから駅から遠くてもいいなど、マイナス要因が気にならないなら、大幅値引きを条件にそのマンションは自分にとってのお買い得物件ということになる。

先日、マンション販売大手の大京、ダイア建設が完成在庫物件の一斉値下げを発表した。値下げ幅は1割くらいになるという。それを思えば、こちらから1割引きを言い出してもまったくおかしくない。いや、ダメもとで2割引きくらいの金額を提示してみよう。「デパートでも値切るのは当たり前」という関西圏に比べ、関東圏では相手の言い値で買う人が多い。値引きを切り出しても全然相手にされなければ脈ナシだが、営業マンが少しでも食いついてきて、「調整させてください」などと言えばかなり脈アリ。あとは駆け引き次第である。

特に大幅な値下げが期待できるのは、“最後の一戸”だ。八百屋でも魚屋でも、最後に残った1個はオマケしてくれる。それが売れれば店じまいできるのはマンションも同じ。売り主としてはこの現場を早く引き上げて、次へ行きたいのだ。

値切りのコツは、値下げにあたり営業マンが上司に提出する稟議書を通りやすくすること。営業マンも無駄な骨折りはしたくない。つまり「安くしてくれたら確実に買う」という意思表示をし、なおかつ買う能力もあることを見せることだ。

また、値切り交渉の際に気をつけるべきなのが、「目先のトク」に惑わされないことだ。

値下げしたくない相手は、「その代わり、テレビをつけますよ」とか、「モデルルームで使っていた家具一式を差し上げます」などと言うことがある。このようなモノに釣られないこと。「最初の2年はローンを補助します」という申し出にも要注意。安い支払いに慣れてしまい、限定の2年が過ぎた後、ローンが払えなくなってしまう買い主も多い。やはり目指すは、支払総額からの値引きであることは念を押しておきたい。

(長山清子=構成 ライヴ・アート=図版作成)