治癒不能といわれたガンが自然治癒する現象が、実際の医療現場で話題になることはまずない。 しかし筆者が目を通した1000本以上の医学論文において、ガンが自然に治癒した事例を報告していた。医師は治すのが仕事なのでこうした事例を追跡研究することはなく、「たまたま」治ったという話は「偽りの希望」を与えるだけだとして積極的に口外することもなかったために、自然治癒事例は事実上放置されてきたのである。全く科学的にメスを入れられていないこのテーマを解明するために、「劇的な寛解」事例を報告した医学論文をくまなく分析し、日本を含む世界10カ国で寛解者と治療者のインタビューを行った結果、ガンの自然治癒を体験した人々には、「9つの共通する実践事項」があった。それらは、がんの治癒のみならず、予防としても役に立つものである。発売と同時に米アマゾン1位“がん部門”にランクイン、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーとなった話題の書『がんが自然に治る生き方』。

デカルトの心身二元論はもう古い――心と身体を別ものとして考える時代は完全に終わりました。過去50年のあいだ、科学者たちは心と身体が単に結びついているだけではなく、密接に絡み合っていることを明らかにしました。

心身二元論に最終的に決着をつけたのは、心、脳、免疫システムの相互作用を研究する精神免疫神経学(PNI)から得られた知見でした。1991年にニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された初期のPNI研究で、研究者たちは大規模なグループを対象に質問用紙に記入させ、その後一般的な風邪のウイルスか塩水の入った点鼻薬スプレーを渡しました(被験者は自分がどちらかのスプレーをもらうことを了解していました)。その結果、ストレスの大きい人は風邪を発症し、ストレスの少ない人は風邪ウイルスを撃退しました。そしてこの結果には年齢、体重、食生活など他の多くの要素にはまったく関係なかったのです。

なぜストレスが病気を引き起こすのか

それから15年後、研究者たちはなぜストレスが身体の病気を引き起こすのかを突き止めました。PNIの研究は、恐れや怒りなどストレスをもたらす感情は脳下垂体にコルチゾール、アドレナリン、エピネフリンなどのホルモンを放出するようシグナルを送ります。これらのホルモンは、敵と戦ったり、敵から逃げたりするような緊急事態であると身体に伝えます。 休息したり回復したりしている場合ではないというわけです。その結果、わたしたちの体は食べ物を消化吸収したり、体内の病原菌と戦ったりすることをいったんやめて、目の前の猛獣から逃げるために血圧を高めようとするのです。

私たちは猛獣に追いかけられるような生活をもはやしていませんが、終わりなき「TO-DOリスト」に追われています。そして何かに失敗するのではないか、誰かに嫌われるのではないかと常に怯えています。そしてやっと休暇を取って「戦うか逃げるか」というモードを休暇モードに切り替えたときに何が起こるでしょう。そう、病気になるのです。なぜなら「TO-DOリスト」から過去何カ月も逃げているあいだに、あなたの身体はあえてウイルスの侵入やバクテリアへの感染を「時間ができるまで」放置していたからです。休暇になってほっとした途端、病気になるのはそのためです。