ここには「未来の学習空間」がある

内田洋行社長 大久保昇氏

東京・中央区にある内田洋行の本社ビル7階。エレベータを降りると、そこには“未来の学習空間”が出現する。同社が「フューチャークラスルーム」と呼ぶICTを駆使した教室だ。小中学校の教室と同じスペースには、カラフルなファニチャーが並び、よく見るとデスクにタブレット型情報端末をセットできるように工夫されている。三方の壁は電子黒板やスクリーンになっていて、タブレットの画面もそこに投影できる。

政府が新成長戦略の一環として位置づけ、2020年度を目途に進める教育の情報化――。具体的には、全国の小中高の児童生徒約1300万人に1人1台の情報端末を導入していくという。最先端のICTで学校が変わる、授業が変わるといわれ続けて久しいが、この斬新な教室は、内田洋行の手によって示された1つの回答といっていい。いま、このスペースには、現役の教員だけでなく、大学の研究者、中央省庁や地方自治体の職員も視察や体験学習に足を運ぶ。

オフィス家具の販売というイメージが強い同社が、こうした学校向け教材やシステムを事業化しているのは意外かもしれない。けれども内田洋行が戦後いち早く、科学教材部を立ち上げ理科用の教材を販売してきた歴史を振り返れば納得がいくだろう。そんな社歴のなかで、1979年の入社以来、ずっと学校向けパソコンの営業を担当してきた大久保昇社長は、その経緯を次のように説明する。

「1910年(明治43)の創業時は旧満州(現中国東北部)の大連で測量製図器具、事務用品を満鉄に納品していました。戦後、国が科学立国を目指す上で、科学教育に力を入れようとしていた。そうした背景から戦前の事業の中でかろうじて残った計算尺の販売を、学校向けにしようと考えたのです。その縁で理科の実験器具も取り扱うようになり、48年(昭和23)に科学教材部をつくって全国の教育委員会と先生に科学実験の説明会を行い、このとき科学教材カタログも制作し、配っています。」