脳の本能としくみを知って、脳をフル回転させる

これら脳のしくみの基盤となるのが「脳の本能」だ。

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脳が持つ7つの本能って何?

林教授によれば、脳には「7つの本能」があるという。まず、「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」という、人間が生まれつき持つ根源的な3つの本能(脳神経細胞に由来)。さらに、「自分を守りたい(自己保存)」「自分で何かをやりとげたい(自我)」「間違ったものは嫌、バランスを取りたい、一貫性をつけたい(統一・一貫性)」といった3つの本能(脳組織に由来)。そして、脳のさまざまな部分が協調して働くことに由来する「違いを認めて共に生きたい」という本能(脳の組織連合に由来)だ。

たとえば、「A10神経群」が情報に感情のレッテルを貼る働きは「生きたい」「自分を守りたい」という本能がベースになっているし、「前頭前野」が「この答えは正しい」「この話は論理的におかしい」といった判断を下すときには「一貫性をつけたい」という本能が基盤となる。そして、「自己報酬神経群」の働きが最大になるのは、「仲間になりたい」「自分で何かをやりとげたい」といった本能の欲求が満たされたときだ。

これらの脳の本能を踏まえ、脳が喜ぶ形で情報をインプットしたとき、ダイナミック・センターコアがフル回転するのだと林教授は説明する。

「朝=楽しい」そう思わせるのが早起きの第一歩

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脳のしくみと本能を知れば「早起きできる方法」が見えてくる

では具体的に、脳のしくみと本能に沿って早起きの習慣をつけるにはどうすればいいのか。

1. ポジティブなレッテルを貼る

まず、親自身が「朝は楽しい」と感じる必要がある。子供の脳が、「A10神経群」で最初に貼るレッテルをポジティブなものにするためだ。「早起きはつらいが仕方ないから起きなければ」と親自身が思っていたら、その時点で、子供の脳は朝に対してマイナスのレッテルを貼ってしまい、脳はうまく活動しなくなる。

ご機嫌なママがとびきりおいしいご飯を作ってくれる。早起きすれば出勤前のパパとキャッチボールができる。そんな、「朝=楽しい」というポジティブなイメージを与えることが何より重要なのだ。朝からガミガミ言うなどもってのほか。なかなか起きられなくても「どうしてできないの!」といった、否定的なメッセージを子供に与えることはしてはいけないのだ。

「自己保存の本能によって、人は自分を否定されると耳を閉ざしてしまいます。相手が親でもそれは変わりません」

2.「一貫性をつける」本能に配慮

「統一・一貫性の本能は正しく判断・理解するために必要で、環境変化、考え方、行動パターンなどあらゆるものに対応します。そのため、急に考えを変えろ、習慣を変えろと言われると、本能的に嫌な気分になるのです。そこで、一気にではなく少しずつ壁を破っていく工夫が必要になります」

いきなり1時間の早起きに挑戦させるのではなく、毎朝10分ずつ、場合によっては5分ずつぐらい、徐々に早めていくのが効果的だ。やがて目標の時間に達して、それが何日か続けば、「統一・一貫性」の本能によって、早起きが習慣化できるという具合だ。