政府が推奨すべきことではない

しかし、仕事だけが人生ではありません。

一度きりの人生を自分なりに味わい尽くすためには、育休に限らず無職の時期を経験することは無駄ではないとも思います。組織や肩書を離れた自分がいかに小さくて、心もとない存在であるかを痛感する人もいるでしょう。我が子のかわいさと成長に強く感動し、価値観が変わってしまう人もいますよね。それはそれでとってもユニークな体験です。

ただし、政府が一般の男性に広く推奨すべき選択肢ではありません。転職や起業を勧める必要はないのと同じです。

男性の育休取得率が1.89%であるからこそ、「あいつは変わっている」という存在感を出すことができるのです。1年ぐらいのブランクはすぐに挽回できる自信がある男性もいれば、仕事より育児のほうが面白いし大事だと感じる男性もいるでしょう。いずれにせよ育休男性たちは少数派であるのが健全だし、彼らは職場で浮くぐらいの覚悟はしていますよ。むしろ望むところなのです。「2020年までに13%」なんて大きなお世話だと思います。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/