資格に頼るのではなく、資格取得で身につけた知識を武器にして、自分の価値を高めたい。

今、日本で何らかの資格・検定に挑戦する人は年間1000万人を超える。国民の10人に1人の割合だ。先行き不透明な時代、資格があれば安心だし収入増も見込めるといった考えからだろう。

「しかし、現実はそう甘くありません」と語るのは資格コンサルタントの末木紳也氏だ。

「たとえば最難関の司法試験や公認会計士試験。勉強だけに集中しても、合格までは数年以上かかりますし、それで合格できる保証もない。大きなリスクを負って資格を取得しても、今は競争が激しくて高収入を得ている人はわずかなのです」。“独立して稼げるおいしい資格はありませんか”という取材をよく受けるそうだが、「そんな資格はない」と末木氏は言い切る。

「資格はむしろ自分自身のスキルアップととらえたほうがいいでしょう。ビジネスで必要な資格や検定を取得した人は、どんな仕事にも対応できる。漫然と会社員生活を送っている人とは社内の査定でも明確な差がつきます」

今、自分がいる職場で身につけた専門知識を仕事に活かし、上を目指すほうが現実的というわけだ。その結果、評価が高まればヘッドハンティングで他社へ好条件で移る道も開けるだろう。つまり、資格・検定はビジネスマンとしてのキャリアを積み重ねていく若い時期に取っておくべきなのだ。末木氏がまず取得を勧めるのはベーシックな資格だ。

「日商簿記、ビジネス実務法務、宅地建物取引主任者、販売士、知的財産管理技能士、ITパスポートの6つ。このレベルの資格を持っていれば、どの部署でもまず困ることはありません」