ポスト「東京五輪」にどんな物語を描くか

【瀧本】小泉さんに対しては「言うことはすばらしい」という評価がある一方で、「何を目指しているか、よくわからない」という声も聞きます。私見では、小泉さんは、これまでの政治の役割を再定義して、より多くの人に政治に関心を持ってもらおうと行動しているように思いますが、具体的な政治課題には、火傷をしないようにあえて近付かないようにしているのでしょうか。

【小泉】政治には、現実的な問題への対応と、中長期の未来を考える、という両面があります。前者の立場では、はっきり言えば、いまの僕自身にはそんなに力がない。内閣府大臣政務官と復興大臣政務官を兼任していますが、大臣政務官とは、総理大臣、大臣、副大臣のさらに下です。ただ、力は弱くても、いい経験ができています。政府の中に入ったことで、権力の機構が見えてきました。一つの政策ができるまでに、政府、与党、官僚の中で様々な権力闘争が起きています。そこがわからなければ、いざ自分が行動を起こそうとしたときに、身動きが取れない。一方、中長期に関して言えば、一番の鍵は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが終わったあとですよ。

【瀧本】祭りのあとですね。

【小泉】東京五輪のあと、日本を様々な課題が襲います。ひとつは人口減少。この5月に「日本創成会議」が発表した2040年の人口推計では、全国の地方自治体の半数が「消滅可能性都市」と名指しされました。僕の地元である三浦市も、ある小学校では今年の新入生がたったの3人でした。こうした自治体が増えています。さらに社会保障の問題があります。2025年には団塊の世代が75歳以上となります。年金、医療、介護の負担はさらに重くなる。消費税を10%に上げたとしても対応しきれません。それは誰もがわかっていることです。

2020年以降の日本は、これまで見て見ぬふりをしていた課題と、向き合わざるをえなくなります。そのとき日本の若者が、そうした時代に生まれてきたことを、ただ悲観するのか、それとも後世に対する使命だと思うのか。明治維新で活躍した20代、30代の志士たちの名前は、いまでも語り継がれています。僕は後世の日本人に「2010年代、20年代の日本の若者はすごかった」と思われるようにしたい。

【瀧本】日本の将来という点では、たとえば「道州制」についてどうお考えですか。

【小泉】これからの日本の課題は「国が全部やります」というわけにはいきません。道州制は言葉ばかりがもて囃されていますが、人口減少などの問題に対処するためには、新しい統治機構を考える必要がある。その論理的な帰結の一つとして、道州制はありうると思います。

【瀧本】私は人を惹きつけるにはストーリーが重要だと考えています。ビジョンと言ってもいい。国や自治体がひとつのプロジェクトだとすれば、そこに懸けてみたいと思えるようなストーリーが必要だと思うんです。

【小泉】いまの日本ほどストーリーのある国はないと思いますよ。東日本大震災と原発事故、急速な高齢化と人口減少、世界最悪の財政赤字。さて、この国の未来はどうなるのか――。