理研の研究者の8割は「1年更新」、常に雇い止めの恐怖にさらされる
世紀の大発見から一転、「STAP細胞」論文に不正があったと世の中から指弾されている小保方晴子さん。理研側は彼女一人を悪者にしようとしているが、なぜ大胆な不正行為に及んだのか。遠因には理研の組織風土が大きく関係している。
報道では理研の組織風土について「行き過ぎた成果主義により研究者が厳しい競争を強いられている」「任期付研究者が多く、業績がなければ研究者を続けられず、かかる重圧は相当なもの」という内部の研究者の声が紹介されている。
理研の研究者は「過度の成果主義」といつクビを切られるのかわからない「有期契約労働者」という不安定な身分にさらされているのだ。
実際、小保方氏をはじめとする大半の研究者は1年更新の契約社員であり、その数は3397人の研究者・職員のうち2793人、82%を占める(2012年度、理研資料)。
たとえば今年度募集の「博士研究員」(ポスドク)は「単年度契約の任期制職員で、評価によりプロジェクト終了(平成30年3月31日終了見込み)まで再契約可能。給与は、経験、能力、実績に応じた年俸制」と書かれている。つまり身分は非正規の契約社員だ。
もちろん、小保方氏の任期も5年だ。ポスドクなど大学や政府関連の任期付研究員は文科省の調べでは約10万人とも言われている。
日本学術会議の調査(2011年9月29日)では、任期付研究員の年収は300万円未満が15.1%、300~400万円未満が26.9%を占め、計42%。年収は年を重ねても変わらず41歳以上でも400万円未満が約40%を占める。
また、有期契約という雇用形態に「全く満足していない」人が60%を超えている。任期付研究員になっても定年制研究員になれる保証はない。理研に限らず一般の非正社員と正社員の構図と何ら変わらない。
そのうえ、来年は契約を更新されないかもしれない、つまり雇い止めの恐怖に常にさらされる。一部上場企業の建築設計業の人事課長は「契約更新時期になると、仕事も手につかなくなるほど精神的に不安定な状態になる人が増え、中にはうつ症になり、精神科のクリニックに通う人もいる」と語る。こうした契約社員特有の精神的ストレスを抱えている人は理研にも相当数いるだろう。