選挙当選後からマスコミへの露出を控え、沈黙を守っていたワタミグループ創業者の渡邉美樹氏。ブラック企業批判の矢面に立つ経営者は、何を目指し、政治の世界に転身したのか。ジャーナリスト田原総一朗氏とエコノミスト吉崎達彦氏が、本音に迫る。
【田原】1つ聞きたい。渡邉さんは「ありがとう」を集めると言っている(*)のに、むしろマスコミでコテンパンに叩かれている。どうして?
【渡邉】マスコミのある方に「なぜ叩くのか」と聞いたら、答えは簡単、「売れるから」でした。
【田原】でもワタミはブラック企業大賞(編集部注:ジャーナリストらで組織したブラック企業大賞企画委員会が認定する賞。同社は今年、「大賞」に選定された)まで受賞して、渡邉さんはブラック企業の代表ということになっている。評判が悪いことはたしかです。
【渡邉】評判を悪くしたい人がいるからでしょう。たとえばある政党は、自民党の1つのターゲットとして僕を選んでいる。
【田原】共産党なんて支持率4~5%だからたいしたことないです。
【渡邉】ただ、選挙期間中に彼らが「渡邉美樹はブラック企業だ」と書いたチラシを何十万枚と駅前で配るんですよ。僕が新宿の駅に行ったときは、空気が全部、僕の敵。これはほんとうに怖いというか、プロパガンダの力というのはすごいなと。
【吉崎】「悪名は無名に勝る」ということを田原さんはよく知っておられると思います。田原さん自身も、結構むちゃくちゃ言われますからね。問題は叩かれた後です。
【田原】僕は渡邉さんを攻撃するつもりはない。でも、渡邉さんの言い方がどこか弁解じみていて物足りないんだ。
【渡邉】弁解というか、そもそも何も話してないです。僕はこの取材も、田原さんだから受けました。テレビから何から「ブラックについて言ってくれ」という依頼がたくさんありましたが、全部断ってきた。やはりいま言われたように、何か言うと言い訳として受け止められますから。