女の子たちにとって今の時代は残酷

【桃井】最近の秋葉原で感じるのは、ニコニコ動画が普及してから、秋葉原に来る女の子たちが変わってきたことです。ニコニコ動画には、初音ミクのようなボーカロイドに歌わせた自作の歌がよく投稿されるのですが、「今日の私は可愛いのよ」という感じの自己肯定をした歌が目立ってきました。その歌詞に共感できるような、素直な女の子が最近増えてきましたね。昔は、学校の友達や周りから理解が得られないために自己肯定ができない、どこかコンプレックスを持った人たちが集まり、癒されるところが秋葉原だったのですが、そんな鬱屈した時代は終わったのかもしれませんね。

【梅本】確かにメイドカフェも、以前は、学校では普段あまり目立たないような女の子がメイドさんに変身して輝ける場だった気がするのですが、今では、「私って可愛いでしょ?」と自己肯定ができる女の子が活躍しているように感じますね。女の子が自己肯定できる今は、明るくなって、いいことじゃないですか。

【桃井】私は、その半面、女の子たちにとって今の時代のほうが残酷だと思うんです。自己表現をできる場があるぶん、ネットの動画の再生数など、数字で露骨にレッテルを貼られやすい。せっかく勇気を出して表に出てみても、誰からも相手にされずに、せっかく話題になっても顔を出せば外見などを叩かれ、打ちのめされた気持ちになる子も多いのではと心配します。私はいつでも傷ついた女の子の方に目が行ってしまいますから。そんな中でがんばっている女の子は応援したくなってしまいます。

【梅本】ネットでの自己表現が簡単にできるようになったぶん、競争も評価も厳しくなったのですね。桃井さんはインターネットの黎明期から自己表現の場としてネットを活用され、いつも流行に流されず、最先端を進まれていると認識しているのですが、今流行のSNSやTwitterのようなネットのツールはどう思われますか?

【桃井】最近、なんでも140字くらいで語ろうとする人が多いですけれど、それは間違いで、どんなことも、ちゃんと説明しようとすると、長くなってしまうものなのですよ。他人の意見をまとめたサイトに乗っかって満足してしまっている感じがしますね。アイドルのライブやイベントのレポートを書く「レポ職人」も減った気がします。以前はブログに長々とレポートを書いてくれた人がいたのに、今は「楽しかった」とつぶやくだけで終わってしまう。つぶやきの行間にあることがまったく記録されていない。ファンやマニアたちが、それぞれ分担してレポートを残しておかないと、ネットの検索でも見つけられず、存在しないことになってしまいます。秋葉原に集まる人たちは、そうではなかったはずです。どうでもいいことを一日中だらだら話して、結論もでないような。そういう過程が面白いはずなのに。

【梅本】桃井さんは、これからの秋葉原はどうなってほしいと思いますか?