1万円あれば中学に1年間通える

村田早耶香(むらた・さやか)
1981年、東京都生まれ。2004年フェリス女学院大学国際交流学部卒業。同大学在学中の02年に、かものはしプロジェクトを立ち上げる。01年「第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」に日本の若者代表として参加。12年、全国日本商工会議所女性連合会が主催する「第11回女性起業家大賞」にて優秀賞を受賞する。

かものはしプロジェクトのWebサイト
http://www.kamonohashi-project.net

「学校に行って勉強をしてみたかった。そうしたら警察官になって、自分のような、売られてしまう子どもを守ることができたのに」

2001年、当時19才の村田早耶香氏がこの言葉を聞いたときから、かものはしプロジェクトは実現に向けて動き始めたのかもしれない。

子どもを売らせない。買わせない。村田氏が共同代表を務めるかものはしプロジェクトは、この2つの活動を軸に、主にカンボジアとインドで児童買春問題(子どもが売られる問題)の解決に取り組んでいるNPO法人だ。フェリス女学院大学に通うごくごく普通の女子大生だった村田氏が、同世代の他の学生と異なるところがあったとすれば、毎年アジアからの留学生が自宅にホームステイしていたことかもしれない。ある年に、タイ人の留学生が来た際に『1万円あったら14才の子が1年間中学に通えるんだよ』と聞いたことがきっかけとなり、村田氏は大学で国際問題を専攻。2年のときに受けた授業で、冒頭の言葉を遺して亡くなったミーチャというタイ人女性のことを知った。

【村田氏】ミーチャは貧しい農村出身でした。母親はすでに亡くなり、父親は無職。自分が働きに出れば幼い妹や弟をお腹いっぱい食べさせてあげられると思った彼女は、出稼ぎに出たところ騙されて売春宿に売られ、客を取ることを強要されたあげく、HIVウイルスに感染して20才で亡くなっています。なんて不公平なんだろうと思いました。私は先進国に生まれただけで大学に通えている。たまたま、その日私が着ていたワンピースは1万円でした。これで救えたかもしれない命だったと思うと切なかった。その日から児童買春について調べ始めました。

児童買春の話を聞けば100人中100人は胸が詰まり、憤りを感じるに違いない。信じられない、どうしてそんな、ひどすぎると感じて、目に涙があふれそうになる。だが、多くの場合、その感情は心のどこかに「ささくれ」として残りながらも、日常の雑事に紛れて忘れ去られる。村田氏はそうではなかった。淡々と話す普段の口調からは想像もつかないが、感受性の振り幅が大きいのだろう。深く刻み込まれたに違いない悲しみと怒りが村田氏を「何とかしなければ」という行動に駆り立てた。