将来は医学部に行かせたいけれど、でもまだ小学生だから……。
いえいえ、準備に早すぎるということはありません。今のうちにやるべきことがあるのです。
医学部受験指導の“神様”による特別レクチャー。「表現力」について解説します。

4年生のうちに「6年分の漢字」を覚えてしまおう

京都大学医学部医学科の面接質問

近年では小論文や面接を入試に取り入れる大学が増え、自分の考えを文章や発言によって表現できることが重視されるようになっています。

したがって、ここでいう表現力とは、文学的な表現力のことではなく、「自分の考えを筋道立ててわかりやすく説明する力」を指します。プレゼンテーション力といってもいいでしょう。

表現力を強化するには、子供にたくさんおしゃべりをさせる、日常の出来事について「なぜ?」と自分なりの疑問をもつように促す、ニュース番組を一緒に見て、それについて親子で話し合ってみるといったことから始めるとよいでしょう。

また、表現力を下支えする基礎づくりとして、小学校で習う漢字すべてを4年生までに習得することをおすすめします。

というのも、人の脳には「9歳の壁」と呼ばれる現象があるからです。9歳から10歳を境にして単純思考から抽象思考へと移行していきます。漢字の習得は単純記憶の領域なので、9歳以前のほうがむしろ得意で、どんどん覚えられるのです。キャラクターの名前などと同じように頭に入るわけです。

漢字を覚えればボキャブラリーも豊富になり、言葉で表現するためのハードルがぐっと下がります。

そのようにして基礎ができてきたら、話題になっている科学トピックなどについての400字(原稿用紙1枚)ほどの説明文を書かせ、それを親がひととおり添削してやります。ここで大切なのは、子供の書いた文章が漠然としていて文意がつかめなかったときに、「まだ子供だから仕方ない」と思い込まないこと。子供であっても、自分なりの視点をもって言いたいことが何なのかを掘り下げれば、論旨の通った説明を文章化するのは不可能ではありません。理解できる知識の範囲でかまわないので、より具体的な記述ができるように、親も一緒になって直すのを手伝ってやることです。

とはいえ、文章を添削するのは大人にとっても難しいことですから、アンチョコを利用してもいいでしょう。『頭がいい人、悪い人の話し方』の著者として知られる樋口裕一さんの著作には、小論文や作文トレーニングの指南書も多数ありますので、参考になると思います。

目標は小学5、6年生くらいで、1つのテーマについて大人と話ができるようになること。例えば「iPS細胞って何?」という問いに対し、自分が知っていることを秩序立てて説明できればOKです。

表現力は入試だけでなく、実際に医師になったときにもとても大事な能力です。例えば池上彰さんのような人が医師だったとしたら、患者の満足度は高いでしょう。病状や治療法をわかりやすく説明できる医師は、それだけ患者に信頼されるのです。

入試に限らず、これからの時代を生き抜くために必須の能力として、表現力はますます重要になっていくはずです。

和田秀樹
精神科医。東京大学医学部卒業。診療を続ける一方、著書『受験は要領』がベストセラーとなって以来、受験指導の権威としても知られる“受験の神様”。