APUの村田陽一事務局次長(学生支援・就職支援担当)は「超難関企業の内定者を見ると、たとえばパナソニックや東芝など製造業では理系学生の採用数が多く、文系はせいぜい40人、50人ぐらいですが、旧帝大や早慶しかいないところにAPUがポツンと入っている。あるいは三菱重工さんのように多く採用してくれるところもある。富士通さんも毎年4~5人採用してくれています」と語る。留学生は学内選考で8割が決まるというが、13年3月卒業生は、12年7月時点で「ほぼ完売状態。就職希望の留学生の内定がほぼ出揃った」(村田事務局次長)という。

なぜ、APUの人気が高いのか。言うまでもなく日本企業が渇望するグローバル人材の資質に優れているからだ。三菱重工の原田人事部次長はAPUの魅力をこう語る。

「1つは中国や韓国に限らず、アジアやヨーロッパを含めて幅広い国や地域の学生が集まり、特定の国に偏らない多様な人材が豊富であることです。2番目は日本語教育にも力を入れ、外国人の日本語レベルが非常に高い。3番目は市街から離れた修学環境に適した立地にあり、実際に非常に勉強しておられる。4番目はキャリア支援の事務局と学生との連携が非常に密であり、日本企業への就職に力を入れていることです」

グローバル人材の資質が異文化リテラシーにあるとすれば、APUは「日本人と留学生が授業や課外活動を含めて交わり合うような仕組みや仕掛けを長年つくり続けてきた」(村田事務局次長)。その1つが留学生と日本人学生が共同生活をおくる学生寮だ。個室と2人部屋があるが日本人は外国人との同居が必須であり、互いの文化を理解し合えなければ一緒に暮らすことはできない。

「国際交流という言葉は美しいのですが、現場では全然美しくない。時には対立も起こります。たとえば『時間にルーズだし、自己主張だけはしやがって』というのが日本人が抱く最初の感覚です。しかし、留学生は国によって悪気がないのに時間の感覚がルーズで約束を守らない人もおり、そこにコンフリクトが起こる。あるいは授業で4人のチームでプレゼンするとなると、日本人2人に細かい準備だけをさせて、留学生の2人がプレゼンのいいところだけを持っていこうとする。『なんだ、このやろう』と思うんですが、それを乗り越えて互いにどうすれば一緒に協力できるのか、相手を巻き込むにはどうすればいいのかを考えないと前に進まない。そうした人種や国境のカベを乗り越える経験をたくさんすることで日本人も一皮むけていく。企業の担当者もそういう点を非常に重視しています」(村田事務局次長)