40歳まではいろいろやって「材料」をそろえればいい

――この本のなかでちきりんさんは、就活中の若い人に「『職業人生は2回ある』という前提に立ち、最初はとりあえず目の前にある仕事をしてみて、その間に自分のやりたいことを見極め、後半人生はそえを中心に設計すればいい」とアドバイスされていますよね。
『未来の働き方を考えよう』
[著]ちきりん(文藝春秋)ちきりんさんの“考えよう”シリーズ最新刊。

【ちきりん】いくらでも途中でやり直せるんだから、学生の時に考えすぎる必要はありません。就活で正しいものを選ばないと人生失敗だと脅かすから、ものすごいプレッシャーがかかり、結果として保守的な大企業に行こうという結論になる。

――やりたいことは何かということが40代くらいではっきりわかればいいと。

【ちきりん】そこまではいろんな経験を積めばいいと思うんです。失敗したからこそわかること、恵まれなかったからこそ身につくこともあります。働きながらいろんな材料をそろえて、人生半ばで自分の求める生き方を実現できれば、そこからまた数十年、楽しく生きていけます。

――ただ、ちきりんさんのお知り合いが本のなかで指摘されていたように、40代になってもほんとうにやりたいことがわかっている人って、やっぱり少数派ですよね。

【ちきりん】全員に見つかるとは、私も思わないです。やりたいことが特にないという人は、いまの生活がすごく嫌だというのでなければ、そのままでいいと思います。ただ、やりたいことが実はあるのに、家族のためとか、この年齢では無理とかいろいろ理由をつけて変わろうとしないのは、本当にそれでいいのか、自分で自分に聞いてみてほしい。この本はそういう人たちへのメッセージなんです。やりたいことが実はあったんじゃないの? それってほんとうにできないの? 思考停止せずに、もういちど考えてみたら? と。「ほんとうに何もやりたいことはない」という人と、明確に「俺はこれがやりたい」という人が全体の1割ずつで、残りの8割は、「そういえばやりたい生活があったかも、でも真剣に検討したことはない」という人だと思うんです。