2013年7月25日(木)

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1勝3敗1引き分け。今年4月の「第2回電王戦」でプロ棋士はソフトに負け越した。コンピュータのデータ解析能力は、将棋のような複雑な世界でも人間を上回りつつある。こうした「ビッグデータ」はビジネスではどう活かされているのか。各社の最新事例を探った──。

蓄積したデータを分析すれば、モノだけでなくヒトの行動も予知できる。

赤外線センサーや加速度センサーを搭載した名札型端末。重さは約22g。

日立製作所では07年に行動計測システム「ビジネス顕微鏡」を開発。09年から子会社の日立ハイテクで事業化している。ビジネス顕微鏡では、赤外線センサーや加速度センサーを搭載した名札型端末を人間が首に掛け、1日の活動を記録する。すると、誰が、誰と、いつ、どこで、どれぐらい活発に話をしていたか、といったデータがとれる。これまでに蓄積されたデータはのべ100万日、10兆個。これらのデータを分析することで、小売店での従業員の配置やオフィスでの勤怠管理などを効率的に行うことができる。

広さ約1000坪のホームセンターで行った実証実験では、店舗の販売員と来店客の計304人に名札型端末を配り、10日間の情報を集めた。売り上げデータと紐付けて分析したところ、客単価と従業員の配置に強い相関があることがわかった。その店舗には、従業員の接客が効果的に働く「高感度スポット」があったのだ。配置を見直したところ、客単価は15%も向上した。

こうした結果が出るまでは、苦難の連続だった。日立では03年頃には「ビッグデータ」の可能性に気づき、研究開発を進めてきたが、なかなか出口が見えなかった。中央研究所の矢野和男主管研究長はいう。

「試行錯誤で見えてきたのは『コンピュータに仮説をつくらせる』という原則です。従来のやり方では、人間が仮説をつくって、コンピュータに検証させていた。でもそれでは、どうやってもうまくいかない。なぜなら、ビッグデータとは人間には概要すら掴めないような大量のデータだからです。もともと知っていることを検証するなら、投資の意味はない。データが価値を生むには、未知の仮説が導き出されなければいけない。大量のデータを活用することと、人間が仮説をつくることは論理的に合わない。自己矛盾なんです」

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