新聞の購読費は権力監視の代行費
ほぼ同じ時期に、私の古巣である政治部がロングラン企画「逐条点検・日本国憲法」を始めました。戦争の体験を受け継ぐことと、戦争によって生まれた憲法を知ること。この2つの企画が国に二度と戦争をさせてはいけない、憲法をもっと生かさないといけないという編集局の「立ち位置」の根っこを作った気がしています。これも私の局長時代、権力と対峙しても編集局がぶれなかった理由です。
本書は東京新聞の代表を昨年6月に退いたことを機に、書き上げました。無料の情報が洪水のように毎日流れている中で、何が「本当のこと」なのか分からなくなっていることや、国の先行きに不透明感が漂っていることへの不安が広がっていることを感じながらの執筆でした。
そんな時代に、新聞の購読代は何の対価になるのでしょうか。新聞の使命からすると、究極的には「権力監視の代行費」です。読者にどれだけ共感してもらえるのか。これが新聞の未来を決める「1丁目1番地」だと思っています。新聞の世界を本書で知ってもらえればと、願っています。読んだことがない人にとって、新聞は「ニューメディア」です。