『傷だらけの天使』の輝き

ただ、ここで桜木健一が演じた刑事は、キャラクターとしてはどこまでも真っ直ぐな正義漢。その意味では、萩原健一が演じたマカロニのような、「しらけ世代」的な屈折はあまり見られない。

太田省一『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)
太田省一『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)

そうした屈折を濃厚に表現していたのが、『太陽にほえろ!』の出演を終えた萩原が続けてすぐに主演したバディものの名作『傷だらけの天使』(日本テレビ系、1974年放送開始)である。

役柄としては探偵なので刑事ドラマではないが、事件の犯人を追うという点では基本的構図は重なる部分も多い。萩原のバディ役は水谷豊。水谷は、『太陽にほえろ!』初回でマカロニに捕まる犯人役を演じていた。そのときの演技が萩原の印象に残っていて、相手役に抜擢されたのである。

2人のバディぶりには、青春の屈折とそれゆえの切なさが発散する圧倒的な輝きがあった。

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