今年も新人社員が入ってきた。若い世代が増えることで、仕事上のコミュニケーション法はどう変化していくのか。ジャーナリストの溝上憲文さんは「文章の最後に『。』をつけるか、チャットツールで名前に『さん』をつけるか、メールの往来は何度すればいいのか、など会社や個人によっても判断が異なり、ルール作りは過渡期にある」という――。
スマホでメッセージを打ち込んでいる男性の手元
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肩書で呼ばれたい上司世代、平気で「さん」で呼ぶZ世代

コロナ禍の急速なリモートワークの普及、そして大量のZ世代の新社会人の流入によって従来の職場のコミュニケーション文化の変化が起こりつつある。

ひと昔前まではメールを上司や取引先に送る場合は、新人社員教育などでは時候の挨拶や「謹啓」「前略」などの使い方を厳しく叩き込まれたものだが、メール自体の存在価値も薄れている。

その代わりに普及しているLINEや各種ビジネスチャットは職場の「報・連・相」を気軽にできるメリットがある。「Slack」では絵文字のスタンプも多く、挨拶の言葉も不要で効率的だ。チャットツール開発企業も「会議の必要性が低下し、絵文字を使えば即座に返信でき、メッセージ件数も圧縮できる」ことを謳い文句にしている。

しかし、こうしたツールの急速な浸透にとまどいや違和感を覚える人たちもいるようだ。

たとえば職場のLINEグループで上司が仕事を指示しても「既読スルー」で返信をしない社員もいるが、上の世代は「本当にやってくれるのか」と不安に思う人もいるだろう。あるいは、親指を立てる「サムズアップ」の絵文字を了解しましたとの意味で使う人もいるが、上司の中には「カジュアルすぎる」「生意気だな」と思う人もいるかもしれない。

職場内だけならまだしも取引先に対しても既読スルーや絵文字で返事をするとなると、ビジネス上のリスクになるかもしれない。取引先の相手に名前の下に「~さん」を付けて送るケースもあり、理解ある人であればよいが「見下ろされている」「馴れ馴れしいやつ」と不快に思う人もいるだろう。

これまで社内のコミュニケーションでも、言葉遣いや呼称には一定のルールがあった。メールを送る場合、課長、部長など役職名をつけるのが常識とする企業も多い。

最近は役職名を外し、さん付けで呼ぶケースもあるが、「日本の組織では常務、局長、部長、課長といった肩書で呼ばれることに喜びを感じる人もいる」(40代商社社員)。ヒエラルキー的秩序を重んじる層少なくない。

LINEやチャットをビジネスで使う場合の「ルール」はあるのか。ビジネスマナー検定の検定委員に聞くと「試験の中に、コミュニケーションツールとしてLINEやチャットの内容も入れ込んでいるが、実はどれが正解というところがまだはっきりしていないのが現状だ。社内や社外を含めてどう使い分けるのがいろいろ難しいところがある」と語る。

従来のルールが通用しなくなり、新たなルールが確立される過渡期だとすれば、社内で一定のルールを設けることがあってもよいかもしれない。