広告のイメージが浸透しても定番になれるとは限らない

一方のサントリーは、ザ・プレミアム・モルツで成功を収めたが、それはプレミアムビールで独自のポジションを確保できたからだ。サントリーのスタンダードビール「ザ・モルツ」は2015年にEXILE TRIBEを広告起用して、売り上げも好調であった。しかしながら、販売は失速し、今年3月製造分をもって順次生産を終了となっている。

1992~94年に放映された、サントリーモルツのテレビCMは和久井映見と萩原健一が起用され、「うまいんだな、これが」のキャッチコピーで知られている。いまでもこのCMを覚えている人は多いと思うが、やはり本商品は定着せず、生き残ることができなかった。

2023年4月に「サントリー生ビール」が発売され、現時点までは売り上げも好調だが、定番商品となれるかは、未知数である。

現在攻勢をかけているキリン「晴れ風」だが、30秒CMでは「キリンラガー、一番搾りのような、自信作です」というナレーションが入っている。

筆者も飲んでみたが、味は一番搾りと似てビール感は強いが、一番搾りと比べると苦みが抑えられてスッキリした味わいだった。パッケージや広告の斬新なイメージとは裏腹に、味は王道路線を狙っているように感じられた。SNS上の口コミを見ても、同様の評価が目立っていた。

スーパードライ、一番搾りに続く銘柄は登場するか

現在のビール市場は活況を呈しており、各社がしのぎを削っている状態だが、「定番」として生き残っていくのは極めて難しい。

それを考えると、最終的に生き残るスタンダードビールは現在と変わらず、アサヒスーパードライ、キリン一番搾り、サッポロ黒ラベル……といった結果になってしまうかもしれない。

しかし、各社の努力によって、若者層のビール離れに歯止めをかけることができれば、ビール市場は今後も活性化し続けることが期待できる。また、最終的に既存の定番商品だけが生き残ったとしても、今回の経験は次の商品開発や、既存商品の広告・宣伝活動など、今後のマーケティング活動に活かすことができるだろう。

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