「Honda e」は本来の性能を発揮できていない?

「Honda e」の充電速度は遅いのだが、バッテリーのコンディションが悪いことによる充電速度の低落ではなく、バッテリーの状態がどうあろうともコンピュータが頑なに充電を絞るという挙動らしい。

Honda eのメーターパネル。最近の他のホンダ車と共通性の高いデザイン
写真=筆者撮影
メーターパネル。最近の他のホンダ車と共通性の高いデザイン

短いインターバルでの繰り返し充電への強さからしてバッテリーは常に「余裕しゃくしゃく」、本来もっと高い性能を狙って設計されていることがうかがえた。

2020年の発売前に取材した時、電気系エンジニアが急速充電30分200kmを実現させる技術的な裏付けについてかなり具体的に述べていた。そのひとつがどのような特性のバッテリーセルを使うかという選択だった。

あえて“奇策”に出た

通常、BEVのバッテリーセルには同じ体積、重量でより多くの電力量を蓄えられるようエネルギー密度の高いものが選択される。それに対して「Honda e」の開発陣はあえてハイブリッドカー用に近い低エネルギー密度セルを使うという“奇策”に出た。

バッテリー密度が低いと蓄電容量は減るが、目の細かいザルより目の粗いザルのほうが水の通りがいいように、高密度タイプより大きな電流を受け入れる。セルの種類もハイブリッドカーで使用実績のあるGSユアサや東芝のチタン酸リチウムイオンセル、中国のCATLセル等々さまざまなタイプを試した結果、パナソニックに決めたとのことだった。

ホンダに限らず取材の現場ではエンジニアが記者に優良誤認させようと意図して話すというのはよくあることだ。が、そういう時はこんな明瞭な言い切りはせず、もっと曖昧な話し方をするのが常で、乗れば一発でバレるような嘘を並べ立てるようなことはまずない。あまつさえ「Honda e」のエンジニアたちは「やり切った」と満足げな表情を浮かべていた。彼らの言葉に嘘はないと見ていいだろう。