欧州で喝采を浴びた「Honda e」のコンセプト

このコンセプトは“小さいのにすごい”と聞くと萌えスイッチが入る傾向が強い欧州で喝采を浴びた。後輪駆動、走行性能の高さ、信じ難いほどの小回り性能、先進装備、凝縮感のあるデザインなど他の要素も考え併せて「ベビーテスラ」と称する向きすらあった。

手前から進行して切り返しなしに180度ターンができてしまう壮絶な小回り性能
写真=筆者撮影
手前から進行して切り返しなしに180度ターンができてしまう壮絶な小回り性能

欧州委員会のBEVゴリ押し政策への対応に大わらわとなっていた欧州メーカーにとって「Honda e」の登場は青天の霹靂へきれきで、普段はやり取りの疎遠な欧州のエンジニアから何か追加の情報はないのかと筆者のもとにメールが何通も届いたりした。

実際には30分充電で100kmほどしか走れなかった

これほど期待感を上げておきながら、なぜ市販車は電気的性能の低いクルマになったのか。

実際にドライブしてみると温暖期でも急速充電30分で200kmどころか満充電からの航続距離が200km程度。物理容量35.5kWhのバッテリーのうち、実際に使っているのは25kWh程度にすぎず、それが足かせになった。

急速充電30分で走れる航続距離はせいぜい平均100kmプラスアルファといったところ。事前の説明に期待を抱きつつ初めて「Honda e」の長距離ロードテストを行った時の空振り感といったらなかった。

なぜ実現できていない空想的性能を開発陣が堂々と語ったのかと最初は腹立たしく思ったものだが、ロードテストを重ね、幾度となく充電しているうちに、別の推測が頭をもたげてきた。

それは「Honda e」が本当はもっと高い充電受け入れ性を持っていたにもかかわらず、発売前に意図的に性能を制限されたのではないかというものだ。