文面から伺える「社内で協議を重ねた跡」

組織を守るため、というのが、まっさきに挙げられよう。

日本テレビは、会社ぐるみで芦原さんの命を奪いたかったわけでは、もちろんない。奪おうとしたのでもない。

亡くなった理由は、芦原さんご本人にも完全に説明するのは難しいのかもしれない。

日本テレビは、たしかに、どちらのコメントでも、まっさきに芦原さんに「哀悼の意を表するとともに、謹んでお悔やみ申し上げます。」と述べている。その突然の逝去にあたっての態度には、過不足がない。

社内で協議を重ねた跡が見えるし、弁護士をはじめとするリーガルチェックも受けたに違いない。亡くなったのは会社の責任です、とは言えないし、そう考えていないとみられる。

1つめのコメントでは、芦原さんの意見を踏まえるだけではなく、相談を続けたこと、さらには、最後のOKをもらえたことを、事実として伝えている。原作者の意向や立場を最大限に尊重した上で、許しも得ていた。その点を明らかにしている。

それだけではない。

末尾では、芦原さんへの謝意を示している。

追悼の言葉と、事実確認、最後には礼を尽くす。この流れは、まったくもって正しい。正しすぎるほどに正しい。組織に揺らぎをもたらさないためには、これ以外の答えはない。

だからこそ問題なのである。

「危機管理」の観点では完璧だったが…

日本テレビは、芦原さんが亡くなってから、一度も公式に記者会見を開いていない。先に引用した2つのコメント以外には、何も発表していない。

週刊誌やネットメディアに出ている情報は少ない。テレビ局には、新聞記者が常に出入りしているにもかかわらず、社員や関係者の声は、ほとんど報じられていない。

箝口令が敷かれているのだろうし、内部からのリークによって「関係者個人へのSNS等での誹謗中傷」が起きるよりは、救いがある。

企業として欠点のないコメントを出し、情報の出所を絞り、内部を統制しながら、外に対応していく。その姿勢は、危機管理の点では100点満点と言えよう。

感情がないわけでもない。文章の上では「哀悼の意を表」しているからである。

「自分の身内が同じ目にあったら、どうするのか」、との批判にすら応えられる。組織を守りながら、人としての思いも見せているではないか。そんな反論も準備してある。