※本稿は、小野尾勝彦『ガチャガチャの経済学』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
ガチャガチャが広がった「コロナ」以外の理由
本項では、アメリカに起源を持つガチャガチャが、なぜ日本で独自の発展を遂げたのかについて、私なりに考察を試みたいと思います。
昨今のガチャガチャ市場の拡大について、メディアなどでは新型コロナウイルス感染拡大が却って功を奏したという論調が散見されます。もちろんコロナの影響は否定しませんが、それ以前からガチャガチャに日本人は魅了されている、もっと言えば日本人の民族性とも関係しており、一過性のブームだとする見方は正しくないと思うからです。
そもそも日本人は小さくて可愛いものを愛でて、集めたがるという習性があるように思います。古代の土偶や埴輪、仏像などが典型的ですが、現代もフィギュアやミニチュア、あるいはキャラクターグッズを集める人が多いことと、ガチャガチャには深い関係があるように思えてなりません。
小さなカプセルに収められた玩具がアメリカから日本に伝わった時点で、現在のガチャガチャ市場の隆盛はある程度約束されたのではないでしょうか。
ハピネットが2023年1月に発表した「カプセルトイの大人需要実態調査」によると、「あなたにとってカプセルトイの魅力は何ですか」という問いに対し、回答者全体で最も多かったのが「クオリティの高さ」でした。以下、「何が出るかわからないドキドキ感」「品ぞろえが豊富」「低価格で買いやすい」「機械を回す楽しさ」と続きます(図表2)。
これから1つひとつ解説していきたいと思います。
数百円でクオリティを追求する「モノづくり」の能力
大人を満足させるクオリティの高さ
黎明期のガチャガチャのクオリティは決して高かったわけではありません。
しかし、時代の変遷を経ながらクオリティアップを果たし、大人を満足させるほどの高水準を実現しました。
このクオリティの高さは日本人がもともと持っているモノづくりの能力やこだわりのなせる業であることは言うまでもありません。単価数百円の商品に対し、ここまでクオリティを徹底するという飽くなき探求心は、外国人から驚きの目を持って見られています。
近年、製造業の世界で「メイド・イン・ジャパン」のブランドの失墜が取り沙汰されていますが、今やガチャガチャこそが「メイド・イン・ジャパン」のすごさを代表するものになっているのかもしれません。