2020年から夏の北海道で企画されている約100万円の列車旅行が人気を集めている。伊豆急行(東急グループ)の観光列車「THE ROYAL EXPRESS(ザ・ロイヤルエクスプレス)」を、夏季だけ北海道に遠征させるもので、JR北海道と東急による異例のコラボだ。プランは3つあり、どれも3泊4日で約100万円と高額だが、発売すると即完売だという。人気企画の背景をレイルウェイ・ライターの岸田法眼さんが紹介する――。

JR北海道と東急の異例のコラボ企画

東急株式会社(以下、東急)とJR北海道は2020年から夏季限定で、北海道内で伊豆急行(東急グループの企業)の豪華列車「THE ROYAL EXPRESS(ザ・ロイヤルエクスプレス)」を使用した「THE ROYAL EXPRESS~HOKKAIDO CRUISE TRAIN~」を運行している。

普段は伊豆を走る私鉄の列車がJR北海道に遠征するという異例の企画だ。この取り組みはいかにして始まったのだろうか。

ヴァイオリニストが実際に乗車

「THE ROYAL EXPRESS」は、2100系アルファリゾート21を改造したジョイフルトレインで、2017年7月に登場。横浜―伊豆急下田間を走る。

30年以上にわたり、鉄道車両をデザインし続けた水戸岡鋭治氏
30年以上にわたり、鉄道車両をデザインし続けた水戸岡鋭治氏 画像提供=©ドーンデザイン研究所

魅力あふれる車両にするため、鉄道デザイナーの第一人者である水戸岡鋭治氏(ドーンデザイン研究所)を起用した。

車体は高貴な色とされるロイヤルブルーを主体にアクセントカラーとしてゴールドを添えている。車内はウォールナットやホワイトシカモアなど多種の木材をふんだんに使用しつつ、和と洋を融合した豪華絢爛けんらんな車両に仕上がっている。実際に乗ってみると、非日常的な雰囲気で、見慣れた車窓が新鮮に映るほど。

1・2号車はゴールドクラス、3号車はマルチカー(展覧会、結婚式、会議などにも使える車両)、4号車はキッチンカー、5~8号車はプラチナクラスとなっている。3・4号車以外は特急形車両のグリーン車に相当する。

面白いのは、5・6号車にピアノを設置していることだ。音旅演出家Ⓡの大迫淳英氏(ヴァイオリニスト)が実際に乗車し、ピアニストとともに生演奏を披露することで、旅のシーンを彩る。

車内ではコース料理を堪能できるほか、1泊2日のクルーズプラン(プラチナクラスのみ適用)では、一流の旅館もしくはホテルに宿泊できる。片道乗車のみの食事つき乗車プランでは、横浜―伊豆急下田間の乗車と食事が満喫できる。

当初、「THE ROYAL EXPRESS」の定員は約100人だった。2020年に料理をすべてコース料理に統一することや、洋式トイレに温水洗浄便座を追設、2・7号車にピアノを新規配置するなど、高付加価値のサービスを実現するための改装を行った結果、定員が約50人に変更された。

車内で行われる大迫氏とピアニストの生演奏
筆者撮影
車内で行われる大迫氏とピアニストの生演奏