「晩婚化のせい」はあまりにも的外れ
岸田文雄首相の「異次元の少子化対策」発言以来、少子化問題に関する話題が世間をにぎわせています。しかし、〈政府の対策は「ひとりで5人産め」というようなもの…人口減少の本質は少子化ではなく「少母化」である〉の記事に書いたように、政府の対策は子育て支援一辺倒であり、抜本的な少子化対策にはなりえないどころか、事実上、今現在でも2人産んでいる多くの子育て世帯にさらなる出生を求めるものであり、何か戦前の「産めよ、殖やせよ」と何が違うのだろうという印象があります。
加えて、自民党の麻生太郎副総裁が、少子化の最大の原因は晩婚化との見方を示した発言は大いに炎上しました。それも当然で、麻生氏の発言は的外れにもほどがあるからです。
以前、私は、当連載において、〈いま増税するなんて狂気の沙汰である…政府は「若者が結婚しない本当の理由」を分かっていない〉という記事で書いた通り、晩婚化など起きておらず、若者が若者のうちに結婚できなくなったがゆえの非婚化であり、もはや若者の諦婚化であるという話をしました。
中国の結婚は滅亡状態にある
あわせて、ニュースでは、中国の人口が減少していることも報じられ、今まで1.70はあると言われてきた中国の合計特殊出生率が、2020年世界銀行の統計では、日本より低い1.28と発表され、そのあまりの出生減は世界に衝撃を与えました。
ちなみに、中国のこの出生減も日本同様、子どもが生まれない少子化ではなく婚姻減による少母化によるものです。中国の婚姻数は2013年の1327万組をピークに7年連続で減少しています。しかも2020年の婚姻数は2013年対比40%減です。日本の婚姻数も激減していますが、それでも同時期の2013年対比では18%減程度なので、いかに中国の結婚が滅亡状態にあるかがわかると思います。
日本、中国に限らず、アフリカを除く先進諸国は軒並み出生率を下げ続けており、これらの要因もほぼすべて「少母化」によるものであることは明らかです。INSEE(フランス国立統計経済研究所)ですら、「近年の出生率低下の要因は、フランス人の出産・育児年代に当たる女性の絶対人口の減少=少母化」であると明言しています。