経済を復活させる2つの方法がある

経済全体の生産性を上げるには、2つのチャネルがあります。ひとつは各企業の生産性を上げることです。もうひとつは市場の競争メカニズムによるものです。市場で高生産性の企業が拡大し、低生産性の企業が縮小することで経済全体の生産性が向上します。

オフィスビルを行き交う人々
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まずは、各企業で生産性を高めるために何ができるのかを考えていきましょう。

労働生産性は付加価値を労働投入量で割ったものなので、生産性を高めるには、付加価値を増やすか、労働投入量を節約するか、あるいはその両方を達成するかしかありません。

企業による資本や人への投資の停滞が、低生産性につながっています。生産性を高めるには、デジタル化を進めると同時に人的資本を高める必要があります。デジタル化を進める際には、単にパソコンなどのハードウェア、経理関係などのソフトウェアを導入するだけでなく、その利便性を活用するために組織の改善も必要となります。

ここで重要なのが、経営者の能力です。経営のあり方は経済状況や市場の力学に左右されることもあり、経営者の質を測ることは決して容易ではありません。しかしながら、最近の研究では、企業経営者の能力が生産性の違いをもたらすことが指摘されています。具体的には、経営者の能力が向上すると、生産性も高まるというものです。

悲観的な経営者はいらない

日本経済が長期にわたり停滞し、人口減少により国内市場が縮小するなかで、多くの企業経営者が今後の市場環境に対して悲観的な見通しを持っています。しかし、厳しい言い方になりますが、本来、経営者に求められているのはこうした消極的な経営姿勢ではありません。経営者には、いかなる環境でも勝ち抜く判断が求められます。

しかしながら、日本の経営者は海外の経営者と比べて、自社の将来展望について自信がない傾向にあります。この理由としては、日本の経営者には経営戦略に長けた人よりも、社内競争に勝ち残った人、ボイスが大きい人、営業や技術に長けていても経営が得意ではない人が少なくないことがあげられます。

図表1に示されているように、日本の経営者の97%は内部昇格によるもので、他企業で経営者としての経験を持たない人の割合も82%となっています。

諸外国に比べると、生え抜きの経営者の割合が高く、また、他企業での経験がない経営者の割合も著しく高くなっています。さらに、海外では経営者の多くがグローバルな経験を持っているのに対して、日本ではドメスティックな経営者が多いという調査結果もあります。